見捨てられたのは私

梅雨の人

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「…行こう」 

再び食事の時間になると亮真様がいらっしゃって、私は抱きかかえられたまま食事の席へ連れていかれております。 

 

食事の席で無言の亮真様を目の当たりにするたびに、琴葉お義姉様と笑って寄り添いながら食事を楽しまれていた亮真様を思い出しては何とも言えない気分に陥っております。 

気持ちを切り替えるのは、時によっては本当に難しいものなのですね。 

「…ご馳走様でした。」 

「奥様…」  

砂を噛むように料理が喉をなかなか通ってはくれないのです。 

無理をして食べようとすれば気分が悪くなってしまうし、お腹もすかないものですから使用人の皆を心配させてしまっているようです。 

お医者様にはあとひと月ほど、足が完治するのに時間がかかるだろうと言われております。

亮真様と顔を合わせて食事をする時間がこのように辛く感じるようになるなんて…。
これからはせめて自分の部屋で食事を済ませたほうが良いのでしょうか。 

そうすればわざわざ食事の度に亮真様を煩わせることもないのですから。 

「亮真さま、食事の度にこうして亮真様にご迷惑をおかけしてしまいますし、これからは足が治るまで私の部屋でお食事を頂きたいのですが。」 

「…だ。」 

「え?」 

「なぜだ?」 

「なぜ…ですか?」 

「…。」 

「えっ…亮真様っ?」 

「…迷惑ではない…昨日は友人の墓参りに行っていたのか?」 

「えっ?ええ、そうですけれども。」 

「なぜ黙っていってしまったんだ?

「それは…申し訳ございませんでした。」 

「帰りが遅くなったのはなぜ…いやなんでもない。…明日私を君の親友の墓参りに連れて行ってくれないか?それから迷惑ではない。これからも迷惑でなければ君を抱えて食事を共にしよう。」 


「どうして…」 

(どうして放っておいてくれないのですか―――) 

琴葉お義姉様を抱きしめておられた腕で亮真様に抱きかかえられておりますと、息苦しくてどうしようもないのです。 

琴葉お義姉様を労わるように恋焦がれるように見つめる亮真様の瞳に私は映っていないのです。 

琴葉お義姉様と幸せそうに楽しそうにお話しされている亮真様が、私と一緒にいると別人のようになるのが居た堪れないのです。 

琴葉様と亮真様のほうが本物の夫婦のようで、そう考えるだけで苦しくなるのです。 
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