見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
46 / 147

42

しおりを挟む
「…行こう」 

再び食事の時間になると亮真様がいらっしゃって、私は抱きかかえられたまま食事の席へ連れていかれております。 

 

食事の席で無言の亮真様を目の当たりにするたびに、琴葉お義姉様と笑って寄り添いながら食事を楽しまれていた亮真様を思い出しては何とも言えない気分に陥っております。 

気持ちを切り替えるのは、時によっては本当に難しいものなのですね。 

「…ご馳走様でした。」 

「奥様…」  

砂を噛むように料理が喉をなかなか通ってはくれないのです。 

無理をして食べようとすれば気分が悪くなってしまうし、お腹もすかないものですから使用人の皆を心配させてしまっているようです。 

お医者様にはあとひと月ほど、足が完治するのに時間がかかるだろうと言われております。

亮真様と顔を合わせて食事をする時間がこのように辛く感じるようになるなんて…。
これからはせめて自分の部屋で食事を済ませたほうが良いのでしょうか。 

そうすればわざわざ食事の度に亮真様を煩わせることもないのですから。 

「亮真さま、食事の度にこうして亮真様にご迷惑をおかけしてしまいますし、これからは足が治るまで私の部屋でお食事を頂きたいのですが。」 

「…だ。」 

「え?」 

「なぜだ?」 

「なぜ…ですか?」 

「…。」 

「えっ…亮真様っ?」 

「…迷惑ではない…昨日は友人の墓参りに行っていたのか?」 

「えっ?ええ、そうですけれども。」 

「なぜ黙っていってしまったんだ?

「それは…申し訳ございませんでした。」 

「帰りが遅くなったのはなぜ…いやなんでもない。…明日私を君の親友の墓参りに連れて行ってくれないか?それから迷惑ではない。これからも迷惑でなければ君を抱えて食事を共にしよう。」 


「どうして…」 

(どうして放っておいてくれないのですか―――) 

琴葉お義姉様を抱きしめておられた腕で亮真様に抱きかかえられておりますと、息苦しくてどうしようもないのです。 

琴葉お義姉様を労わるように恋焦がれるように見つめる亮真様の瞳に私は映っていないのです。 

琴葉お義姉様と幸せそうに楽しそうにお話しされている亮真様が、私と一緒にいると別人のようになるのが居た堪れないのです。 

琴葉様と亮真様のほうが本物の夫婦のようで、そう考えるだけで苦しくなるのです。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

〈完結〉【コミカライズ・取り下げ予定】思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約

ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」 「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」 「もう少し、肉感的な方が好きだな」 あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。 でも、だめだったのです。 だって、あなたはお姉様が好きだから。 私は、お姉様にはなれません。 想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。 それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

気づいたときには遅かったんだ。

水瀬流那
恋愛
 「大好き」が永遠だと、なぜ信じていたのだろう。

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。 正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。 忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。 ──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

処理中です...