見捨てられたのは私

梅雨の人

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「そうか。君にとって本当に大切な方だったんだな。亡くなられて君もさぞ寂しいことだろう。わかるよ。俺も去年年の離れた妹を亡くしてね。こうしてちょくちょく訪ねてきては話しかけて心を落ち着けているんだ。」 

「そうでしたか…それは…。」 

「それはそうと腹が減ったなあ。もしよければ一緒に飯でもどうだい、小雪さん?」 

「--ええ、よろしくお願いいたします。以前お助けいただいたお礼もさせてくださいませ。」 

「礼なんていいんだよ。とにかく決まりだな。ええと、君は車で来ているんだよな。」 

「ええ、また後程迎えに来るように伝えます。」 

「そうか、では行こうか。小雪さん、足が…」 

「ええ。これでもだいぶ良くなったのですよ。ゆっくりですが歩けます。」

「じゃあゆっくり行こう。」 

人一人分を開けて一宮様の後ろを歩きます。 

「なぜ後ろを歩くんだ。話しづらいだろう?隣にきてくれ。」 

「え?ええ。失礼いたしました。」 

「そうそう。はははっ、隣にきてくれたのに、そんなに離れて歩くなんて。ふっ」 

一宮様の隣を大きな人一人分あけて歩きます。 

足の長い一宮様がゆっくりと私の歩調に合わせて歩いてくだっております。
誰かにこうして歩調を合わせて歩いてもらうことが、こんなに安心感を与えてくれることを初めて知ることができました。 

◇◇◇◇

「ここはよく墓参りの帰りに世話になっているんだ。味は確かだから安心してくれ。」 

「墓地のすぐ近くなのですね。私もこれから妙子さまのお墓参りの際には立ち寄らせていただこうかしら。」 

「ああ、それがいい。さあ、何にしようか。」 

「そうですね…私はこのスープを頂きます。」 

「は?スープ?昼にこのスープだけとかいわないよな?」 

「駄目…ですか? 

「いや、すまない。言い方が悪かった。余計なお世話を承知で言わせてもらうが出来たら君はもう少し食べた方がいい。ああ、そうだ。いろいろ頼んでみよう。小雪さんが好きなのを食べたらいい。」 

「そんな、残してしまいます。」 

「ああ、それは問題ない。俺はこう見えて大食漢なんだ。」 

「大食漢…ですか?」 

「ああ、大食漢、だ。」 

「はっ…ふふふっ!では大船に乗ったつもりで頂きます。」 

「ああっ、任せてくれ!」 

「お待たせいたしました。」 

次から次に料理が並べられていきます。二人掛けのテーブルに料理が入りきらないため、予備のテーブルが側付けされてその上にさらにお料理が載せられていきます。 

周りのお客様もちらちらと私たち二人と料理の量を見比べては驚かれております。 

「くっくっくっ。みんな俺たち二人がこの量を食べるのかって口があんぐりなってるな。」 

「もっもう、一宮様。笑い事ではございませんよっ…ふふっ!」 

「まあ、たまにはこういうのもいいな。さて頂きますか?」 

「ええ、頂きます。」 
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