見捨てられたのは私

梅雨の人

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コンコンッコンコンッ 

「ん…?なんだこんな朝早くに…。入れ。」 

扉をノックする音で私の意識も覚醒しましたが目の前に亮真様のたくましい胸板が広がっておりまして動揺した私は情けないことに寝たふりをすることに致しました。 

亮真様はずっと私を抱きしめたまま眠ってくださっていたのでしょう。全身が亮真様の匂いと体温に包まれております。 

「旦那様…申し訳ございません。お客様がおいでになっておりまして旦那様にどうしてもお会いしたいとおっしゃっておりますもので。」 

「こんな早くに…?と、なんだもう9時か。…。で?誰だ?」 

「琴葉さまでございます。」 

「義姉さんが?なんだろう…わかった。すぐに行くと知らせてくれ。」 

 

「…亮真さん?まだ寝ていたの?」 

「琴葉様!」 

「あら?小雪さんと一緒に寝ていたのね…。」 

「悪いが義姉さん。小雪はまだ寝ているんだ。こんなところにまで来ないでくれ。とにかく下の階で待っていてくれ。」 

「琴葉様、行きましょう。」 

 

使用人が琴葉義姉様を連れて部屋を静かに出て行きました。 

「はぁっ」 

大きなため息をついた亮真様は体を起こされたようです。 

これからお義姉様にお会いするのでしょう。 

琴葉お義姉様も、亮真様にお会いするためとはいえまだお休みになられている部屋にまで訪ねていらっしゃるだなんて… 


チュッ 

頬に柔らかな感触を感じたところで亮真様は静かに私から離れて部屋を出て行かれました。 

朝から、いえ、昨晩から色々と驚きの連続でございます。 胸の中のもやもやが一気にうるさい鼓動で上書きされてしまいました。 

再び静かになったのを確認して私も起きることに致しました。亮真様が色々と気にかけてくださったおかげでそろそろ足のほうも元通りになってきたのではないかと思っております。 

「奥様、足のほうもだいぶ良くなってきているのでしょうね。とはいえ無理な動きは禁物ですので、たとえ御不浄に行くとは言えどうぞ私どもを遠慮なく呼んでくださいませ。」 

「ありがとう。それで…今亮真様は?」 

「旦那様は…食堂で朝食を召し上がっております。その…琴葉様が少し強引に朝食を一緒にとお誘いになられたご様子でして。旦那様は奥様と朝食をご一緒になさりたいのでお断りをしていたみたいですけれども。」 

「そう。わかったわ。教えてくれてどうもありがとう。」 

「奥様は朝食はいかがなされますか?」 

「そうね…今日は部屋で頂こうかしら。膳の上げ下げが大変になってしまうと思うのだけれどもいいかしら? 

「もちろんですとも、お任せくださいませ奥様。」 


わざわざ窓際にテーブルと椅子を移動して色とりどりの食事が並べられていきます。 
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