39 / 147
35
しおりを挟む
コンコンッ
「小雪、食事の時間だ。行くぞ。」
「はい…。」
私の膝裏に腕を入れて抱き上げた亮真様は、食事の間にそのまま入ってから私を席へおろしてくださいます。
そのまま無言で二人で食事をしてそれから再び私を抱きかかえた亮真様は私を部屋へ運んでくださいました。
もう数週間ほどこのようなことが続いておりますが何度されても私が慣れることもなく、使用人達の生暖かい目にさらされながら真っ赤になる顔をうつむけるしかないのです。
「後は頼んだぞ。」
「はい、お任せくださいませ旦那様。奥様、それではご入浴の準備が整いますまでお待ちくださいませ。」
転ばないように慎重に浴室へと入る私には必ず使用人がつきそってくれます。
「奥様、力加減はいかがですか?」
お風呂上りにはひきつる足の筋肉はもとより全身を使用人の千絵がマッサージしてくれるようになりました。
「気持ちいい…」
「ふふふっ。そうおっしゃっていただけてようございました、奥様。」
「ありがとう。」
「とんでもございません奥様。あ、奥様少し席を外させていただきますね。」
「どうしたの?」
急に千絵が持ち場を離れるのは珍しいことですので不思議に思っておりますと、大きな暖かい手が私の腰のあたりを包み込みました。
明らかに千絵の掌の倍はあり、ふわりと香る石鹸の匂いで誰かが分かります。
ここ最近ずっと抱きかかえてくださるおかげで亮真様の匂いがすぐにわかるようになりました。
「あの…亮真様のお手を煩わせるなんて…」
「気にしなくていい。それよりも力加減が難しいな。このくらいでいいか…?」
どういたしましょう。お風呂上がりで何も身に着けておりません。臀部を布でかろうじて隠せているかいないかですので恥ずかしくて仕方ありません。
「小雪、痛くないか?あとはどこら辺を揉めばいいんだ?」
「亮真しゃま…っあ…あのっ…ではふくらはぎを…」
「…。」
私のお願いを聞いてくださった亮真様はふくらはぎを無言で、これ以上ないくらいやさしく丁寧にもんでくださりました。
「ありがとうございました。あの…亮真様…?」
「着替えを…」
「え?…」
「着替えを手伝おう。ほら袖を通すぞ。」
「いえ、それは…。」
「ほら…」
「は…はい…」
「この紐はここに通すんだな…うん、これでいいか。」
「あの…亮真様、もうこれで大丈夫ですので。亮真様も今日もお疲れでしょうからどうぞお休みになられてくださいませ。」
「…今日は私もここで寝る。」
「え?」
「嫌か?」
「いいえそんなことはございませんが…」
有言実行とばかりにさっさと私の隣に横たわる亮真様を見て戸惑いを覚えてしまいます。
「小雪、頭を。」
「頭…ですか?」
「私の腕の上に君の頭を。」
「亮真様の腕の上になんて…そんな。」
「…腕枕というものらしい。」
「腕枕…ですか?」
「ああ。だから、ほら。そう、もっと私によって。大丈夫だ。重くないし私も暖かくて気持ちい。」
「そう…ですか…」
ちらりと亮真様をうかがうとすでに目を閉じておられました。お疲れなのでしょう。亮真様をおこさないようにそっと頭を動かそうとするとすぐに亮真様に抱きしめられてしまいました。
胸の鼓動が激しくなります。これでは緊張して眠れないと思っておりましたのに、気が付けば朝までぐっすりと眠ることが出来ておりました。
「小雪、食事の時間だ。行くぞ。」
「はい…。」
私の膝裏に腕を入れて抱き上げた亮真様は、食事の間にそのまま入ってから私を席へおろしてくださいます。
そのまま無言で二人で食事をしてそれから再び私を抱きかかえた亮真様は私を部屋へ運んでくださいました。
もう数週間ほどこのようなことが続いておりますが何度されても私が慣れることもなく、使用人達の生暖かい目にさらされながら真っ赤になる顔をうつむけるしかないのです。
「後は頼んだぞ。」
「はい、お任せくださいませ旦那様。奥様、それではご入浴の準備が整いますまでお待ちくださいませ。」
転ばないように慎重に浴室へと入る私には必ず使用人がつきそってくれます。
「奥様、力加減はいかがですか?」
お風呂上りにはひきつる足の筋肉はもとより全身を使用人の千絵がマッサージしてくれるようになりました。
「気持ちいい…」
「ふふふっ。そうおっしゃっていただけてようございました、奥様。」
「ありがとう。」
「とんでもございません奥様。あ、奥様少し席を外させていただきますね。」
「どうしたの?」
急に千絵が持ち場を離れるのは珍しいことですので不思議に思っておりますと、大きな暖かい手が私の腰のあたりを包み込みました。
明らかに千絵の掌の倍はあり、ふわりと香る石鹸の匂いで誰かが分かります。
ここ最近ずっと抱きかかえてくださるおかげで亮真様の匂いがすぐにわかるようになりました。
「あの…亮真様のお手を煩わせるなんて…」
「気にしなくていい。それよりも力加減が難しいな。このくらいでいいか…?」
どういたしましょう。お風呂上がりで何も身に着けておりません。臀部を布でかろうじて隠せているかいないかですので恥ずかしくて仕方ありません。
「小雪、痛くないか?あとはどこら辺を揉めばいいんだ?」
「亮真しゃま…っあ…あのっ…ではふくらはぎを…」
「…。」
私のお願いを聞いてくださった亮真様はふくらはぎを無言で、これ以上ないくらいやさしく丁寧にもんでくださりました。
「ありがとうございました。あの…亮真様…?」
「着替えを…」
「え?…」
「着替えを手伝おう。ほら袖を通すぞ。」
「いえ、それは…。」
「ほら…」
「は…はい…」
「この紐はここに通すんだな…うん、これでいいか。」
「あの…亮真様、もうこれで大丈夫ですので。亮真様も今日もお疲れでしょうからどうぞお休みになられてくださいませ。」
「…今日は私もここで寝る。」
「え?」
「嫌か?」
「いいえそんなことはございませんが…」
有言実行とばかりにさっさと私の隣に横たわる亮真様を見て戸惑いを覚えてしまいます。
「小雪、頭を。」
「頭…ですか?」
「私の腕の上に君の頭を。」
「亮真様の腕の上になんて…そんな。」
「…腕枕というものらしい。」
「腕枕…ですか?」
「ああ。だから、ほら。そう、もっと私によって。大丈夫だ。重くないし私も暖かくて気持ちい。」
「そう…ですか…」
ちらりと亮真様をうかがうとすでに目を閉じておられました。お疲れなのでしょう。亮真様をおこさないようにそっと頭を動かそうとするとすぐに亮真様に抱きしめられてしまいました。
胸の鼓動が激しくなります。これでは緊張して眠れないと思っておりましたのに、気が付けば朝までぐっすりと眠ることが出来ておりました。
1,819
お気に入りに追加
4,113
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。
音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。
幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。
やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。
すっかり諦めた彼女は見合いをすることに……
だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。
二人の心は交わることがあるのか。
「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる