36 / 147
亮真3
しおりを挟む
初夜以降、小雪は自分の部屋で寝るようになった。私も小雪に無理強いをしたくはないというのは建前で、初夜以降琴葉義姉さんのもとに行っていた件で気まずくて自分の部屋で寝るようにしていた。
あの時琴葉義姉さんのもとに行くことを選んでしまった私は、小雪との夜の夫婦生活において大きな禍根を残してしまったようだ。
しかも夫婦となってから同じ屋根の下に暮らす新婚夫婦である私たちは会話どころか食事さえも共にしていなかったとようやく思い至った。
兄さん夫婦を招いた夕餉の席の後、私が小雪との初夜の後ずっと義姉さんとともにいたことを兄さんに言わないように小雪に口留めしていた義姉さんの会話を聞いてしまった。こうして義姉さんの言っていることを聞いていると自らの行いがおかしかったのだと確信し後悔した。
その後、兄さんは琴葉義姉さんと私に烈火のごとく怒りをぶつけ、そして呆れていた。
それはそうだろう。
しかし愚かな私は、そんな状況でもあの時せめて小雪が琴葉義姉さんのことをフォローしてくれていたら兄さんもそこまで義姉さんを怒ることはなかったのにと少しだけ考えてしまった。
私は小雪の部屋に足を向けた。
部屋に入るとそこにいた小雪の眼もとが真っ赤になっていた。
小雪の涙を見て再び自分の傲慢さに嫌気がさした。何とも後味の悪い気持ちに襲われた。
小雪が泣いていた。―――わたしに失望してしまったのだろうか。
分かり切っているのに涙の意味を確認する勇気もない私はその後小雪が気になって仕方なかった。
◇◇◇◇
それからしばらくして琴葉義姉さんの誕生日の祝いに呼ばれた。
義姉さんに買い物に連れまわされた経験のある私は義姉さんの欲しそうなものは大体理解しているので、仕事の合間に街に一人で買いに出かけた。
小雪も一緒に選びたかったのだろうかとふと思ったが、それ以上気に留めることはなかった。
そして琴葉義姉さんの祝いの場で、小雪は窓際に座り太賀兄さんと楽しそうに過ごしていた。楽しそうに――。
私と夫婦になってから一度も見せてくれていない笑顔を兄さんに見せていた。太賀兄さんもなぜ義姉さんのそばにいてやらないんだと内心腹立たしく思った。
琴葉義姉さんが小雪と兄さんをちらちらとみているのになぜ気が付かないのかと。
小雪が足をく負傷したことに気が付けない私とは違い、兄さんはとっくに気が付いており医者まで手配していた。小雪を抱き上げ颯爽と会場を出ていく兄に無性に腹が立った。
いつ小雪がこんなことになったのか全く見当もつかなかった。
しばらくして冷静に考えてみると、車から降りた時私が小雪に手を貸さずさっさと先に歩いて行ったせいで足首を負傷したのだろうと思い至った。
そう、私のせいで。
寝室で横たわった小雪を目の当たりにしながら、医者との会話を思い出し罪悪感に襲われた。
あの時琴葉義姉さんのもとに行くことを選んでしまった私は、小雪との夜の夫婦生活において大きな禍根を残してしまったようだ。
しかも夫婦となってから同じ屋根の下に暮らす新婚夫婦である私たちは会話どころか食事さえも共にしていなかったとようやく思い至った。
兄さん夫婦を招いた夕餉の席の後、私が小雪との初夜の後ずっと義姉さんとともにいたことを兄さんに言わないように小雪に口留めしていた義姉さんの会話を聞いてしまった。こうして義姉さんの言っていることを聞いていると自らの行いがおかしかったのだと確信し後悔した。
その後、兄さんは琴葉義姉さんと私に烈火のごとく怒りをぶつけ、そして呆れていた。
それはそうだろう。
しかし愚かな私は、そんな状況でもあの時せめて小雪が琴葉義姉さんのことをフォローしてくれていたら兄さんもそこまで義姉さんを怒ることはなかったのにと少しだけ考えてしまった。
私は小雪の部屋に足を向けた。
部屋に入るとそこにいた小雪の眼もとが真っ赤になっていた。
小雪の涙を見て再び自分の傲慢さに嫌気がさした。何とも後味の悪い気持ちに襲われた。
小雪が泣いていた。―――わたしに失望してしまったのだろうか。
分かり切っているのに涙の意味を確認する勇気もない私はその後小雪が気になって仕方なかった。
◇◇◇◇
それからしばらくして琴葉義姉さんの誕生日の祝いに呼ばれた。
義姉さんに買い物に連れまわされた経験のある私は義姉さんの欲しそうなものは大体理解しているので、仕事の合間に街に一人で買いに出かけた。
小雪も一緒に選びたかったのだろうかとふと思ったが、それ以上気に留めることはなかった。
そして琴葉義姉さんの祝いの場で、小雪は窓際に座り太賀兄さんと楽しそうに過ごしていた。楽しそうに――。
私と夫婦になってから一度も見せてくれていない笑顔を兄さんに見せていた。太賀兄さんもなぜ義姉さんのそばにいてやらないんだと内心腹立たしく思った。
琴葉義姉さんが小雪と兄さんをちらちらとみているのになぜ気が付かないのかと。
小雪が足をく負傷したことに気が付けない私とは違い、兄さんはとっくに気が付いており医者まで手配していた。小雪を抱き上げ颯爽と会場を出ていく兄に無性に腹が立った。
いつ小雪がこんなことになったのか全く見当もつかなかった。
しばらくして冷静に考えてみると、車から降りた時私が小雪に手を貸さずさっさと先に歩いて行ったせいで足首を負傷したのだろうと思い至った。
そう、私のせいで。
寝室で横たわった小雪を目の当たりにしながら、医者との会話を思い出し罪悪感に襲われた。
2,019
お気に入りに追加
4,046
あなたにおすすめの小説
業腹
ごろごろみかん。
恋愛
夫に蔑ろにされていた妻、テレスティアはある日夜会で突然の爆発事故に巻き込まれる。唯一頼れるはずの夫はそんな時でさえテレスティアを置いて、自分の大切な主君の元に向かってしまった。
置いていかれたテレスティアはそのまま階段から落ちてしまい、頭をうってしまう。テレスティアはそのまま意識を失いーーー
気がつくと自室のベッドの上だった。
先程のことは夢ではない。実際あったことだと感じたテレスティアはそうそうに夫への見切りをつけた
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる