見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
31 / 147

31

しおりを挟む
「肩と頭を打ち付けた?いつの話だ?今回の足のケガだって一体どうして…」 

「足は…先ほど車から降りた際に…」 

「そんな…なぜ私に言わない?」 

「声をかけさせて頂こうにも…亮真様に私が追いつけませんでしたので…。結局琴葉お義姉様にもお祝いのお言葉も伝えそびれてしまいましたし…」 

「それは…」 

「あの…もう大丈夫ですので。私のことは気にせずお祝いの席にどうかお戻りください。」 

「君はそれでどうするというんだ?」 

「私は…しばらくこちらで休ませていただいてから先に屋敷に戻っております。お義姉様に申し訳なかったと出来たらお伝えいただけませんでしょうか。」 

「…わかった。」 

 

沈黙の後亮真様が扉を開いて部屋を出て行かれようとしております。 

「入っていいか?小雪さん、大丈夫か?」 

「兄さん、小雪は大丈夫だ。」 

「そんなはずないだろう。小雪さん琴葉のことは気にせずしばらくここで休むといい。」 

「兄さんそんな言い方ないだろう?義姉さんの折角のめでたい日だというのに。」 

「あの…もう痛みも治りましたので…申し訳ございませんがお先に帰らせていただきます。あっ!」 

「小雪っ!」「おっと小雪さん!」 

「もっ申し訳ございません、亮真様。太賀お義兄様。」 

床に足を下ろすだけでズクンと全身を貫く痛みが走ります。 

どっと冷や汗が湧いて出てくるのを感じながらかろうじて立ち上がることが出来ましたがもう動けそうにありません。 

『居た堪れない――前にも後ろにも進むことができないなんて。迷惑だけしかかけられない自分が情けない――』 

 間一髪で太賀お義兄様に支えていただき体勢を保つことができましたが、情けなさと痛みで視界が滲みます。 

 

「屋敷まで送ろう小雪さん。つかまって。」 

ふわりと視界が浮かび上がりましたがそこから一歩も前には進みません。 

「亮真何をしている。手を放せ。」 

「小雪は私の妻です。私が抱き上げて自宅に連れて帰るのが筋でしょう?」 

「だそうだよ、小雪さん。どうしようか?」 

「あ…あの「どうなっているの?太賀、心配になって来てみたら…また小雪さんを抱きかかえて。亮真さんも私の折角のお祝いの席だというのに一緒にいてくれないなんて…。ねえ、小雪さん。一人で大丈夫でしょ?…ね?」 

「琴葉、そこまでにしたほうがいいぞ。見た通り小雪さんは怪我をしているんだ。こうして屋敷に送り届けるのは当然だろう。」 

「それなら使用人に任せたらいいのではないかしら?」 

「使用人にこんな状態の小雪さんを任せられるか。とにかく道を開けてくれ。っと、亮真。お前は一体何がしたいんだ?」 

「だから私が小雪を連れて帰ると言っているのですよ。兄さん。小雪を渡してください。」 

「そんな、亮真さん。亮真さんまで小雪さんと一緒に帰るというの…?」 

「…小雪を送り届けてすぐに琴葉義姉さんのもとに戻る。さあ、兄さん小雪を渡してくれ。」 


ー亮真様は琴葉義姉さんのもとに戻る…なんだかその言葉に抉られる想いでございます
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

〈完結〉【コミカライズ・取り下げ予定】思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約

ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」 「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」 「もう少し、肉感的な方が好きだな」 あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。 でも、だめだったのです。 だって、あなたはお姉様が好きだから。 私は、お姉様にはなれません。 想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。 それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

気づいたときには遅かったんだ。

水瀬流那
恋愛
 「大好き」が永遠だと、なぜ信じていたのだろう。

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。 正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。 忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。 ──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

処理中です...