見捨てられたのは私

梅雨の人

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「肩と頭を打ち付けた?いつの話だ?今回の足のケガだって一体どうして…」 

「足は…先ほど車から降りた際に…」 

「そんな…なぜ私に言わない?」 

「声をかけさせて頂こうにも…亮真様に私が追いつけませんでしたので…。結局琴葉お義姉様にもお祝いのお言葉も伝えそびれてしまいましたし…」 

「それは…」 

「あの…もう大丈夫ですので。私のことは気にせずお祝いの席にどうかお戻りください。」 

「君はそれでどうするというんだ?」 

「私は…しばらくこちらで休ませていただいてから先に屋敷に戻っております。お義姉様に申し訳なかったと出来たらお伝えいただけませんでしょうか。」 

「…わかった。」 

 

沈黙の後亮真様が扉を開いて部屋を出て行かれようとしております。 

「入っていいか?小雪さん、大丈夫か?」 

「兄さん、小雪は大丈夫だ。」 

「そんなはずないだろう。小雪さん琴葉のことは気にせずしばらくここで休むといい。」 

「兄さんそんな言い方ないだろう?義姉さんの折角のめでたい日だというのに。」 

「あの…もう痛みも治りましたので…申し訳ございませんがお先に帰らせていただきます。あっ!」 

「小雪っ!」「おっと小雪さん!」 

「もっ申し訳ございません、亮真様。太賀お義兄様。」 

床に足を下ろすだけでズクンと全身を貫く痛みが走ります。 

どっと冷や汗が湧いて出てくるのを感じながらかろうじて立ち上がることが出来ましたがもう動けそうにありません。 

『居た堪れない――前にも後ろにも進むことができないなんて。迷惑だけしかかけられない自分が情けない――』 

 間一髪で太賀お義兄様に支えていただき体勢を保つことができましたが、情けなさと痛みで視界が滲みます。 

 

「屋敷まで送ろう小雪さん。つかまって。」 

ふわりと視界が浮かび上がりましたがそこから一歩も前には進みません。 

「亮真何をしている。手を放せ。」 

「小雪は私の妻です。私が抱き上げて自宅に連れて帰るのが筋でしょう?」 

「だそうだよ、小雪さん。どうしようか?」 

「あ…あの「どうなっているの?太賀、心配になって来てみたら…また小雪さんを抱きかかえて。亮真さんも私の折角のお祝いの席だというのに一緒にいてくれないなんて…。ねえ、小雪さん。一人で大丈夫でしょ?…ね?」 

「琴葉、そこまでにしたほうがいいぞ。見た通り小雪さんは怪我をしているんだ。こうして屋敷に送り届けるのは当然だろう。」 

「それなら使用人に任せたらいいのではないかしら?」 

「使用人にこんな状態の小雪さんを任せられるか。とにかく道を開けてくれ。っと、亮真。お前は一体何がしたいんだ?」 

「だから私が小雪を連れて帰ると言っているのですよ。兄さん。小雪を渡してください。」 

「そんな、亮真さん。亮真さんまで小雪さんと一緒に帰るというの…?」 

「…小雪を送り届けてすぐに琴葉義姉さんのもとに戻る。さあ、兄さん小雪を渡してくれ。」 


ー亮真様は琴葉義姉さんのもとに戻る…なんだかその言葉に抉られる想いでございます
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