22 / 147
22
しおりを挟む
「妙子、小雪さんが来てくれたよ。」
「まあ、小雪様」
「妙子様ごきげんよう。お加減が宜しくないと伺って図々しくも妙子さまに会いに来てしまいましたわ。」
「図々しいなんてそんな事絶対にありえませんわ、このような姿でお迎えしてしまってごめんなさいね。」
妙子さまの旦那様は気を使って下り私と妙子さまを残して部屋を出ていかれました。
出ていかれる際に、妙子さまの肩に優しくショールをおかけになって、お二人がほほ笑みあっておられます。
本当に二人はお似合いの夫婦だと素直に羨ましく感じてしまいます。
妙子さまと子供の頃、二人でお茶を共にした時に、偶然現れた子猫の後を思わず二人でつけて行ってお茶会どころではなくなってしまったこと。
孝一郎お兄様のご学友に二人して憧れを抱いたこと。
そして亮真様と婚約したことを妙子様になかなか言い出せなくて、気まずくなってしばらくぎくしゃくしてしまったことなど昔の思い出話に花を咲かせておりました。
本当に懐かしくてあっという間に時間が過ぎてしまいました。
「小雪様、今日は訪ねてきてくださって本当にうれしかったわ。本当に…本当に、ありがとう。小雪様がお友達で私とても幸せよ。」
「妙子様、私も妙子さまのようなお友達がいてくださって本当に幸せですわ。また是非お邪魔させてくださいませ。」
「ええ、もちろんよ小雪様。いつでもいらっしゃってね。あと、私はいつでも小雪様の見方よ。いつまでも小雪様のことを応援しているわ。だから、どうか、どうかお幸せにね…。」
「妙子様?」
ポロリと涙を流す妙子様をすかさずぬぐって差し上げている妙子さまの旦那様が私に静かに頭を下げられます。
お二人の仲の睦まじさに心が温まります。私はお二人に頭を下げその場を後にさせていただきました。
それから三週間後、妙子さまは静かにお亡くなりになりました。
妙子さまに最後まで寄り添っておられた妙子さまの旦那様は憔悴しておられました。
「最後に妙子があなたと話をしたいのだという願いをかなえられてよかった。ありがとうございました。」
「何も知らずに暢気に昔話に花を咲かせただけで何も気が利いたことがあの時できずに申し訳ございませんでした…。」
葬儀はしめやかに執り行なわれました。私は涙を抑えることができずにおりました。
それからは心にぽっかりと穴が開いたようで食事ものどを通らなくなってしまいました。
幸か不幸か、だからと言ってそんなわたくしの様子にここではだれも気がついてはおりません。
「まあ、小雪様」
「妙子様ごきげんよう。お加減が宜しくないと伺って図々しくも妙子さまに会いに来てしまいましたわ。」
「図々しいなんてそんな事絶対にありえませんわ、このような姿でお迎えしてしまってごめんなさいね。」
妙子さまの旦那様は気を使って下り私と妙子さまを残して部屋を出ていかれました。
出ていかれる際に、妙子さまの肩に優しくショールをおかけになって、お二人がほほ笑みあっておられます。
本当に二人はお似合いの夫婦だと素直に羨ましく感じてしまいます。
妙子さまと子供の頃、二人でお茶を共にした時に、偶然現れた子猫の後を思わず二人でつけて行ってお茶会どころではなくなってしまったこと。
孝一郎お兄様のご学友に二人して憧れを抱いたこと。
そして亮真様と婚約したことを妙子様になかなか言い出せなくて、気まずくなってしばらくぎくしゃくしてしまったことなど昔の思い出話に花を咲かせておりました。
本当に懐かしくてあっという間に時間が過ぎてしまいました。
「小雪様、今日は訪ねてきてくださって本当にうれしかったわ。本当に…本当に、ありがとう。小雪様がお友達で私とても幸せよ。」
「妙子様、私も妙子さまのようなお友達がいてくださって本当に幸せですわ。また是非お邪魔させてくださいませ。」
「ええ、もちろんよ小雪様。いつでもいらっしゃってね。あと、私はいつでも小雪様の見方よ。いつまでも小雪様のことを応援しているわ。だから、どうか、どうかお幸せにね…。」
「妙子様?」
ポロリと涙を流す妙子様をすかさずぬぐって差し上げている妙子さまの旦那様が私に静かに頭を下げられます。
お二人の仲の睦まじさに心が温まります。私はお二人に頭を下げその場を後にさせていただきました。
それから三週間後、妙子さまは静かにお亡くなりになりました。
妙子さまに最後まで寄り添っておられた妙子さまの旦那様は憔悴しておられました。
「最後に妙子があなたと話をしたいのだという願いをかなえられてよかった。ありがとうございました。」
「何も知らずに暢気に昔話に花を咲かせただけで何も気が利いたことがあの時できずに申し訳ございませんでした…。」
葬儀はしめやかに執り行なわれました。私は涙を抑えることができずにおりました。
それからは心にぽっかりと穴が開いたようで食事ものどを通らなくなってしまいました。
幸か不幸か、だからと言ってそんなわたくしの様子にここではだれも気がついてはおりません。
1,685
お気に入りに追加
4,116
あなたにおすすめの小説
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。
音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。
幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。
やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。
すっかり諦めた彼女は見合いをすることに……
だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。
二人の心は交わることがあるのか。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
わたしは不要だと、仰いましたね
ごろごろみかん。
恋愛
十七年、全てを擲って国民のため、国のために尽くしてきた。何ができるか、何が出来ないか。出来ないものを実現させるためにはどうすればいいのか。
試行錯誤しながらも政治に生きた彼女に突きつけられたのは「王太子妃に相応しくない」という婚約破棄の宣言だった。わたしに足りないものは何だったのだろう?
国のために全てを差し出した彼女に残されたものは何も無い。それなら、生きている意味も──
生きるよすがを失った彼女に声をかけたのは、悪名高い公爵子息。
「きみ、このままでいいの?このまま捨てられて終わりなんて、悔しくない?」
もちろん悔しい。
だけどそれ以上に、裏切られたショックの方が大きい。愛がなくても、信頼はあると思っていた。
「きみに足りないものを教えてあげようか」
男は笑った。
☆
国を変えたい、という気持ちは変わらない。
王太子妃の椅子が使えないのであれば、実力行使するしか──ありませんよね。
*以前掲載していたもののリメイク
私が妻です!
ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。
王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。
侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。
そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。
世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。
5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。
★★★なろう様では最後に閑話をいれています。
脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。
他のサイトにも投稿しています。
【完結】私の婚約者はもう死んだので
miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」
結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。
そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。
彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。
これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる