見捨てられたのは私

梅雨の人

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いつの間にかぽつんと一人混乱しながら取り残されてしまいましたけれども、とにかく遅れてしまったのなら早く亮真様にお祝いの言葉と祝いの万年筆だけでも送らせていただこうと急いでシガールームに足を向けました。 

ノックをせずとも扉は開いておりますが、それでも急に私のような小娘一人で男性ばかりのシガールームに立ち入るのは気が引けてしまいます。立往生していますと亮真様の友人らしきかたの声が聞こえてきました。 

「おい、亮真、お前婚約者とうまくいっていないのか?あと少しで夫婦になるっていうのに、お前の誕生日にも駆けつけてこないだなんて…。」 

「いや、そういう訳はないが」 

久々に亮真様の声が聞こえてきて鼓動が脈打ちます。同時に周りの方々にもそのような疑問を与えてしまっていたのだと思うといたたまれなくなり、ますます部屋へ入りづらくなってしまいました。 

けれども、ここはきちんとしなければと思い、恐る恐る開いたドアをノックして一歩足を踏み入れました。  

―――せめて遅れてしまった理由を説明してそれから―――出来ることならお祝いの言葉も直接伝えたい―――。 
 

亮真様とご友人の方々が一斉に私の方に視線を向けてきます。 

亮真様は何を驚かれたのか私を凝視しておられます。 

「あの…亮真様、皆様失礼いたします。亮真様、本日はお誕生日おめでとうございま「あれ、小雪さん、まだこちらにいらっしゃったの?なかなか私たちの所にいらっしゃらないからどうしたのかと思って迎えに来ましたのよ?亮真さん、皆さん失礼いたします。さあ、小雪さん、行きましょう?」 

「いえ、でもまだ亮真様に。」 

「でもお義母さまも小雪さんをお待ちですのよ?」 

「申し訳ございません琴葉お義姉様。すぐに参りますので。あの、亮真様。本日は遅れてきてしまい申し訳ございませんでした。お誕生日おめでとうございます。」 

綺麗に包装された万年筆を手渡すことができてほっといたしました。こんなことでも、ずっと会えなかった亮真様が目の前にいらっしゃってお祝いの言葉を伝えることができて嬉しく感じるのです。 

「小雪…ありがとう。」 

「いえ、こちらこそ今日は誘って頂けて嬉しく思います。」 

「そうか、その…良ければ少し庭に二人で出ないか?」 


「よかったじゃないか亮真、俺らのことは心配するな。久々に婚約者殿に会えたのだからさっさと行ってくるがいい。」 


「そうか、じゃあ行ってくるよ。お前らも寛いでいてくれ。じゃあ、小雪行こうか。」 

「ええ、亮真さま。」 

 

差し出されたたくましい亮真様の腕に手を添えて部屋を出ようと歩き出しました。 
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