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お店は異国で修業を積んできたという料理人たちが創り出す料理が大層人気を博しておりますようで、予約なしでは入店できないとお兄様がおっしゃっておりました。
店内は着飾った人々で賑わっておりまして、キャンドルの淡い灯が空間を彩っております。初めてこのような場所を一人で訪れましたので少し気後れしてしまいます。
到着してからすぐに、お店の方がテーブルに案内してくださいました。
注文は亮真様様が来てからにしようと決めておりましたので、飲み物だけ先にお願いして亮真様の到着を待っております。
「いらっしゃいませ。」
お店の方が来店した方々に声をかけるたびに視線がどうしてもそちらに向かってしまいます。その度に亮真様ではなかったと気持ちが落ち着かなくなってしまうのですが。
30分、1時間が過ぎ次第に店内も人々でいっぱいになってまいりました。
一人で食事をすることもなく佇む私に周囲の方々も好奇な目を向けてまいります。
「おい、気づいたか?」
「ああ、もうかれこれ二時間は一人でいるよな。誰なんだよあんなかわいい子を待ちぼうけさせる奴は。声をかけたいが…いや、こんな場所ではできないよな。」
「みて、あの方。飲み物だけでこんな長い時間おひとりでいるなんて。どなたかをおまちなのでしょうね。かわいそうに。」
ヒソヒソヒソヒソと囁き声が聞こえてまいります。
いたたまれない気持ちにふたをして、亮真様がそれでも今日このお店を私と時間を過ごすために予約をしてくれたのだと。だから亮真様は必ずいらっしゃるのだと。それだけを心の支えに亮真様をお待ちしておりました。
気が付けば周囲は私一人だけでございます。
「お客様。申し訳ございませんがあと少しで本日の営業は終了となります。」
「そうでしたか。ご迷惑をおかけしてしまいまして申し訳ございませんでした。ではこれにて失礼させて頂きます。」
お店の方が提示された金額は飲み物代程度の微々たるものでした。長時間食べ物を注文もせず居座ってしまったのです。お詫びに食事代に迷惑料を入れて多めに支払いをさせていただくと大変恐縮されてしまいました。
店の外に一歩足を踏み出すと街頭の灯がぼやけて見えます。
「お嬢様」
店の前には藤堂家の車が用意されておりました。
本来亮真様に屋敷まで送っていただく予定でしたので、我が家の車が思いがけず私のことを待っていてくれて安堵いたしました。
亮真様がいらっしゃらなかったために大河内家の車ももちろんありませんので、屋敷までこの真っ暗な中一人で帰る手段なくうろたえるところでした。
「幸太郎様が念のためにとおっしゃられまして。小雪様が心配でたまらないのでしょうな。さあ、冷えます。早く帰りましょうお嬢様。」
「ええ、そうね。ありがとう。長いこと待たせてごめんなさいね。」
乗り込んだ車に揺られながらふと外を見ようと顔を向けると、窓には哀れな表情をした私の顔がぼんやりと映っておりました。
「こんな顔を亮真様に見せずに済んでよかったのかもしれないわね…」
疲れ切った声でつぶやいた私の声は幸い誰にも届きませんでした。
店内は着飾った人々で賑わっておりまして、キャンドルの淡い灯が空間を彩っております。初めてこのような場所を一人で訪れましたので少し気後れしてしまいます。
到着してからすぐに、お店の方がテーブルに案内してくださいました。
注文は亮真様様が来てからにしようと決めておりましたので、飲み物だけ先にお願いして亮真様の到着を待っております。
「いらっしゃいませ。」
お店の方が来店した方々に声をかけるたびに視線がどうしてもそちらに向かってしまいます。その度に亮真様ではなかったと気持ちが落ち着かなくなってしまうのですが。
30分、1時間が過ぎ次第に店内も人々でいっぱいになってまいりました。
一人で食事をすることもなく佇む私に周囲の方々も好奇な目を向けてまいります。
「おい、気づいたか?」
「ああ、もうかれこれ二時間は一人でいるよな。誰なんだよあんなかわいい子を待ちぼうけさせる奴は。声をかけたいが…いや、こんな場所ではできないよな。」
「みて、あの方。飲み物だけでこんな長い時間おひとりでいるなんて。どなたかをおまちなのでしょうね。かわいそうに。」
ヒソヒソヒソヒソと囁き声が聞こえてまいります。
いたたまれない気持ちにふたをして、亮真様がそれでも今日このお店を私と時間を過ごすために予約をしてくれたのだと。だから亮真様は必ずいらっしゃるのだと。それだけを心の支えに亮真様をお待ちしておりました。
気が付けば周囲は私一人だけでございます。
「お客様。申し訳ございませんがあと少しで本日の営業は終了となります。」
「そうでしたか。ご迷惑をおかけしてしまいまして申し訳ございませんでした。ではこれにて失礼させて頂きます。」
お店の方が提示された金額は飲み物代程度の微々たるものでした。長時間食べ物を注文もせず居座ってしまったのです。お詫びに食事代に迷惑料を入れて多めに支払いをさせていただくと大変恐縮されてしまいました。
店の外に一歩足を踏み出すと街頭の灯がぼやけて見えます。
「お嬢様」
店の前には藤堂家の車が用意されておりました。
本来亮真様に屋敷まで送っていただく予定でしたので、我が家の車が思いがけず私のことを待っていてくれて安堵いたしました。
亮真様がいらっしゃらなかったために大河内家の車ももちろんありませんので、屋敷までこの真っ暗な中一人で帰る手段なくうろたえるところでした。
「幸太郎様が念のためにとおっしゃられまして。小雪様が心配でたまらないのでしょうな。さあ、冷えます。早く帰りましょうお嬢様。」
「ええ、そうね。ありがとう。長いこと待たせてごめんなさいね。」
乗り込んだ車に揺られながらふと外を見ようと顔を向けると、窓には哀れな表情をした私の顔がぼんやりと映っておりました。
「こんな顔を亮真様に見せずに済んでよかったのかもしれないわね…」
疲れ切った声でつぶやいた私の声は幸い誰にも届きませんでした。
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