見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
3 / 147

3

しおりを挟む
私も話上手というわけではございません。ですが亮真様との会話が途切れた時間でさえも愛おしいと感じてしまうのです。 

「小雪というのは素敵な名前だな。」 
「…ありがとうございます。とても…嬉しいです…」
「…そうか。」
 

「なんと亮真もそんなことを言うようになったとはなあ。」 

「っ太賀兄さんなぜここにいるんだ?」 

「お前がいつまでたっても小雪さんを私に紹介してくれないものだから会いに来たんだ。っと、失礼。亮真の兄の大河内太賀です。よろしく小雪さん。」  

「亮真様のお義兄様…っ。お初にお目にかかります。藤堂小雪でございます。こちらこそどうぞよろしくお願い致します。」 

「もういいだろ、兄さん。早く出て行ってくれ。」 
「わかったわかった、小雪さんお邪魔したね。」

「ふふふふふっ!太賀に、亮真さん、酷いわ。私には紹介して頂けないの?亮真さん、紹介してくださいな。」 

「…小雪、太賀兄さんの許嫁で琴葉義姉さんだ。義姉さん、彼女が小雪だ。」 

太賀お義兄様のお隣には、太賀お義兄様の許嫁の琴葉様がいらっしゃいました。 

心なしか少し不貞腐れたように見える亮真様に琴葉様がやさしく声をかけておられます。 


「よろしくね、小雪さん。」
「こちらこそ、不束者ですがどうぞよろしくお願いいたします。」

「さあ、もういいだろう?二人とも出て行ってくれ。」
「ふふふふふっ、仕方ないわねえ。行きましょう?太賀?」
「ああ、わかったよ。またな、小雪さん。」

本当に挨拶をしにいらしただけのようで、太賀お義兄様と琴葉様は部屋を出て行かれました。 

亮真様同様に上背があって役者にしてもおかしくない見目の太賀お義兄様と、おっとりと麗しい琴葉お義姉様は大変お似合いのお二人でございました。 

「騒がしくしてしまってすまなかった小雪。」
「いえ、お二人にお会いできてよかったです。」
「そうか。そう思ってくれたのならよかった…」

その日も亮真様と二人だけの時間がゆっくりと流れて行きました。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

〈完結〉【コミカライズ・取り下げ予定】思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約

ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」 「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」 「もう少し、肉感的な方が好きだな」 あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。 でも、だめだったのです。 だって、あなたはお姉様が好きだから。 私は、お姉様にはなれません。 想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。 それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。 正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。 忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。 ──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。

音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。 幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。 やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。 すっかり諦めた彼女は見合いをすることに…… だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。 二人の心は交わることがあるのか。

「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

茉丗 薫
恋愛
わたくしの愛おしい婚約者には、一つだけ欠点があるのです。 どうやら彼、『きみ』が大好きすぎるそうですの。 わたくしとのデートでも、そのことばかり話すのですわ。 美辞麗句を並べ立てて。 もしや、卵の黄身のことでして? そう存じ上げておりましたけど……どうやら、違うようですわね。 わたくしの愛は、永遠に報われないのですわ。 それならば、いっそ――愛し合うお二人を結びつけて差し上げましょう。 そして、わたくしはどこかでひっそりと暮らそうかと存じますわ。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

処理中です...