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ジョーンズと幸せ
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ルビーが離縁して実家のアボット伯爵家に戻ったと手紙で知らせを受けた。
次男である自分はもうすぐ実家の公爵家の持つ伯爵の位を譲り受けることになっており、それまでは兄の元で執務を手伝っている。
そんな矢先にルビーの実家からやってきた執事のフィンに手紙を手渡された。
手紙を読んで思わず椅子をひっくり返して立ち上がっていた。
兄はその様子で何かを察したらしく、器用に書類に目を通しながらも笑いながら頑張って来いと俺を送り出してくれた。
もう他の奴に渡したくない。その想いだけでルビーの実家のアボット伯爵家に駆けつけてしまった俺を、ルビーの家族は温かく出迎えてくれた。
着の身着のままで手紙だけを握って単騎で駆け付けた俺は今思えば見るも無残だったろうに、ルビーは俺を目にした途端近づいてきた。
近づいてきたルビーは俺の髪に絡みついていた草を取ってふっと笑みをこぼした。
とにかくまた誰かに奪われる前にと焦っていた俺はその場で跪き、彼女に必死にプロポーズした。
その場に居合わせた彼女の家族や使用人は突然のことに息を飲み、しかし彼女だけはフワッと笑って私に抱きついてきた。
愛してると告げた俺に、彼女も愛してると答えてくれた。
◇
その一年後、俺たちは夫婦になった。
社交界では、ルビーの再婚が良くも悪くも話題となったが、それ以上に、俺のルビーへの執着が引くほど激しいと瞬く間に有名になっていた。
おかげで俺に声をかけてくる女達もなりを潜めたようだった。
気が付けば5人もの可愛い子供たちに恵まれ、そしてあっという間に自立した子供たちを見守る立場になっていた。
始終ルビーにべったり張り付いている俺は大人げないと子供たちに言われ続けている。
今はたくさんの孫達に囲まれルビーと共に幸せな日々を送っている。
「おじいさまはどうしてそんなにおばあさまにべったりくっついているのかしら?」
「そっ、それはだなー。あっ、父上!孫にこう言われてるそばから!またしれっと母上を膝の上に抱込んでっ。聞いてますか...キイテナイデスヨネー」
「おじいたまがばばたまに、ちゅうちゅうっていつもちてるのー」
「ちゅうちゅうって....ほっほら、お母様やお父様があなた達に大好きのキスを送るようなものよ?」
「おじいたまとばばたまのちゅーはとーっても長くっていーつもしてるのよー。」
「お父様、孫たちに何を見せてるんですか...」
「アイシテルっておばあさまにそう何度も伝えなくとも良いと思いますが?」
「ハハハッ。みんなによく言われるよ。だが仕方ないだろう。本心なんだから。なあ、ローズ。愛してるよ...。」
「ソウデスカ...ハハハ...」
「おじいさまはおばあさまといるときほっぺたがゆるみっぱなしなのはどうしてですか?」
「.....」
そんな質問を孫たちが親たちにするのを微笑ましく思う。
ルビーの元夫は、結局あの後ずっと浮いた話もなく独身を貫き通している。
愚かだったが、ルビーを手放した気持ちを思うと頭が上がらない。おかけで今、隣には愛しいルビーが寄り添ってくれているのだから。
「愛しているよ、ルビー」
そう伝えたら私も愛しているわと答えてくれる君がなんとも愛おしい。
そんな奇跡のような幸せな日々を与えてくれる愛しいルビーとこれからも生きていく。
【完】
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
次男である自分はもうすぐ実家の公爵家の持つ伯爵の位を譲り受けることになっており、それまでは兄の元で執務を手伝っている。
そんな矢先にルビーの実家からやってきた執事のフィンに手紙を手渡された。
手紙を読んで思わず椅子をひっくり返して立ち上がっていた。
兄はその様子で何かを察したらしく、器用に書類に目を通しながらも笑いながら頑張って来いと俺を送り出してくれた。
もう他の奴に渡したくない。その想いだけでルビーの実家のアボット伯爵家に駆けつけてしまった俺を、ルビーの家族は温かく出迎えてくれた。
着の身着のままで手紙だけを握って単騎で駆け付けた俺は今思えば見るも無残だったろうに、ルビーは俺を目にした途端近づいてきた。
近づいてきたルビーは俺の髪に絡みついていた草を取ってふっと笑みをこぼした。
とにかくまた誰かに奪われる前にと焦っていた俺はその場で跪き、彼女に必死にプロポーズした。
その場に居合わせた彼女の家族や使用人は突然のことに息を飲み、しかし彼女だけはフワッと笑って私に抱きついてきた。
愛してると告げた俺に、彼女も愛してると答えてくれた。
◇
その一年後、俺たちは夫婦になった。
社交界では、ルビーの再婚が良くも悪くも話題となったが、それ以上に、俺のルビーへの執着が引くほど激しいと瞬く間に有名になっていた。
おかげで俺に声をかけてくる女達もなりを潜めたようだった。
気が付けば5人もの可愛い子供たちに恵まれ、そしてあっという間に自立した子供たちを見守る立場になっていた。
始終ルビーにべったり張り付いている俺は大人げないと子供たちに言われ続けている。
今はたくさんの孫達に囲まれルビーと共に幸せな日々を送っている。
「おじいさまはどうしてそんなにおばあさまにべったりくっついているのかしら?」
「そっ、それはだなー。あっ、父上!孫にこう言われてるそばから!またしれっと母上を膝の上に抱込んでっ。聞いてますか...キイテナイデスヨネー」
「おじいたまがばばたまに、ちゅうちゅうっていつもちてるのー」
「ちゅうちゅうって....ほっほら、お母様やお父様があなた達に大好きのキスを送るようなものよ?」
「おじいたまとばばたまのちゅーはとーっても長くっていーつもしてるのよー。」
「お父様、孫たちに何を見せてるんですか...」
「アイシテルっておばあさまにそう何度も伝えなくとも良いと思いますが?」
「ハハハッ。みんなによく言われるよ。だが仕方ないだろう。本心なんだから。なあ、ローズ。愛してるよ...。」
「ソウデスカ...ハハハ...」
「おじいさまはおばあさまといるときほっぺたがゆるみっぱなしなのはどうしてですか?」
「.....」
そんな質問を孫たちが親たちにするのを微笑ましく思う。
ルビーの元夫は、結局あの後ずっと浮いた話もなく独身を貫き通している。
愚かだったが、ルビーを手放した気持ちを思うと頭が上がらない。おかけで今、隣には愛しいルビーが寄り添ってくれているのだから。
「愛しているよ、ルビー」
そう伝えたら私も愛しているわと答えてくれる君がなんとも愛おしい。
そんな奇跡のような幸せな日々を与えてくれる愛しいルビーとこれからも生きていく。
【完】
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
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