愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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ノア:君が去った後で

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ルビーが去っていった。 



最初は私たちの恋愛感情など必要なかった。自分の婚約者だと初めて紹介されたのは14の時だった。 

一つ年下の彼女は物静かで、一見大人しいだけかと思ったが真のあるしっかりした女性だとすぐに気が付いた。 

長いまつげが大きな綺麗な瞳に影を作り、神秘的で物憂げで、いつの間にかその瞳に吸い寄せられたように目が離せなくなっていた。

他の奴らの目に触れさせたくない、自分だけを見てほしい。その透き通るような声も、甘く爽やかに香るしなやかな肢体も全て自分のものに出来たのだと結婚後は浮かれていた。 

甘やかせてずっと閉じ込めておきたかった。それほどまでにルビーを愛していたのに。 

突然ルビーの親友だったカミラからルビーの誕生日に贈るものを一緒に選んでほしいのだと手紙を貰い、何も考えずに買い物に共に出かけた。 

何かと身体を寄せてくるその女にこんな女だったのかと不快感を抱いたがルビーの親友だと思いぐっとこらえた。 

でも、愚かな私はずっと自分のことを想っていた、ルビーと出来ないことでも何でもするからと懇願され流されるままに関係を持ってしまった。

ルビーには絶対に出来ないことをしても歓喜に震える女は、それから次第に自分にとって都合の良い存在となっていた。だが、そんな日々も長続きせず、ルビーにばらすと脅された。 

結婚記念日にルビーがずっと行きたいと願っていた街へ女を連れていく羽目になった。 

そしてついには、屋敷の夫婦の寝室で過ごしたいと押し切られた。 

そして夫婦の寝室であの女とやけくそな気持ちで交わっていたのをルビーに目撃された。心臓がえぐられる思いがした。 

それからというもの、必死にルビーを自分につなぎ留めたくてあの誓約書にサインをした直後、あの男がルビーの前に現れるようになった。 

二人で出かけるようになり、しまいには、私がいつかルビーを連れていきたかったソルトー街に二人で行ってしまった。 

ソルト-街から帰って来てからルビーはジョーンズと距離を置いていた。
ホッとしたのもつかの間、ジョーンズを見つめるルビーの表情を見て遂に愛を知ってしまったのだと悟った。 

彼女を手放すのは身を切られるほどつらかった。

こんなはずではなかった。 

ルビーのいない世界は白黒の世界のようだ。



養子となった息子が屋敷で生活するようになった。

非常に優秀な子で、あとを継がせることに何の問題もなさそうで安堵している。

母親がいないことに申し訳なさを感じるが。

それでも私はこれからもルビーの幸せを祈って、この子と二人で生きてく。
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