愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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ジョーンズ:男の嫉妬

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この街にきてから、ルビーの表情が一層柔らかく艶めかしくなっていた。 

彼女の隣にいる俺にはその羨望の視線が男共から向けられているがルビーは全く気が付いた様子はない。 

「ジョー、お願い…。一人じゃ不安なの。」 

ああ、参った、お手上げだ…
そんな顔でルビーにお願いをされて俺が断れるわけがないのにと内心苦笑する。 

ほら、足元に気を付けるんだと言ってそっとルビーの手を差し出すと安心しきったように手を握り返してくる。 

華奢で柔らかい手が触れるだけで心が満たされた気持ちになる。 

温泉がお気に召したようで、ルビーは毎晩湯につかるようになっていた。 

俺と一緒に…仕様がないじゃないか。一人じゃ心細いという彼女の願いはかなえてやらねば。 

俺が了承するといつも嬉しそうにするルビーの笑顔が俺の胸を熱くする。 

 

昼は街を散策し、午後はゆったりと観光しながら過ごす日々。ずっとこのまま二人だけでゆっくりとここに住めたらいいのにと思う。 

俺の心は満たされっぱなしだ。
 
たまに湯が跳ねる音と、自然からの心地よい響きに包まれ我に返る。 


そんなある日、ルビーは少し考えるようなしぐさをして、夫であるノアについて珍しく思考を巡らせていた。 
 

「ノアもカミラとこの場所にきて、今の私のように満たされた気持ちでいたのかしら…。」 

自分と同じように満たされた気持ちになっていたのかと歓喜する気持ちが込み上げると同時に、口を噤んだ。 

奴らが逢瀬を楽しんでいたのなら、答えはイエスだ。そりゃ好きな子とこんなところに来て楽しくないわけがない。

だがルビーを愛しているのなら、今頃愚かな行いを心から後悔しているのだろう。 

まあ今更後悔してもどうしようもないだろうが。

しかしながら、こうなってもルビーに気に掛けてもらえるあの男が心底羨ましい。
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