愛を知ってしまった君は

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
34 / 49

言い訳2

しおりを挟む
「でもずっとルビーが頭から離れなかった俺は頑なに彼女の好意をかわし続けた。それでも、侯爵令嬢というのに必死になって俺なんかに好意を示し続けてきてくれたんだ。 

周囲もそんな彼女に同情的で、新たな恋の相手に彼女で何が不満なんだってなって来て。彼女に不満はないが、でも彼女はルビーじゃなかった。ルビーじゃなかったんだ…。 」

その言葉に不意にドキッとしたルビーの手を包むジョーンズの手が僅かに強張ったのを感じた。

「それから、俺は…。ルビーが俺に会いたいって手紙をくれたときに、こんな奇跡があるのかと信じられない思いで帰国を決めた。その時、おそらく彼女の父親からルビーのことを聞いたんだろう。 

帰国のための荷物を取りに最後に俺の部屋に戻ったときに、どうやってかそこに忍び込んできた彼女が…その…俺に抱きついてきたんだ。」 

「あなたの部屋に…忍び込んで?」 

「ああ…それから俺が驚きで動きが止まったと同時に彼女が俺に抱きついてきた。」 

「それで…」 

「それで…俺は彼女を引き離そうとしたんだ。その拍子に彼女の体が投げ出されて…幸いベッドの上に体が行ったからよかったものの…その女性に対して酷いことをしてしまった。」 

「それは…そうね…」 

「ああ…とにかく俺は行かないでほしいという彼女を置いたまますぐに部屋を出てルビーに会うために国に戻ってきた。」 

「そう…そうなのね。」 

「ああ、そうだ。だから今日偶然彼女に会って、なんと言っていいか。気まずくなってしまった…すまなかった。」 

話を聞いたルビーはその大きな瞳を伏せた。 

自分の知らないジョーンズの過去にあのキーラという女性がいたという事実に、ルビーは息苦しさを感じていた。 

そんな資格はないのに…と自嘲しながら。  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?

わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。 分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。 真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...