愛を知ってしまった君は

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
33 / 49

言い訳1

しおりを挟む
ジョーンズが今回の滞在の為に予約していたのは、その湖畔に面した一番眺めの良い客室で、落ち着いた雰囲気の広々とした部屋が二部屋含まれていた。 

上階は眺めの良い寝室で、下はプライベートの温泉が備え付けられている。心なしか気まずい雰囲気のジョーの視線を時折感じたものの、ルビーは客室から見える綺麗にライトアップされた湖畔に目を向けていた。 

長旅で少々疲れも出ていた為、部屋に食事を運んでもらいゆったりと過ごすことのできたルビーは、お休みとジョーンズに伝えると自分に用意された部屋へ入っていった。 

「おやすみ、ルビー。」 

「おやすみなさい、ジョー。今日もありがとう、楽しかったわ。」 



 そんな当たり前のことにも考えが及ばなかったからなのか、キーラという女性と会ってからジョーンズは自分に対してばつが悪そうな顔をしているのに気が付いていた。

恋人でも夫婦でもない関係…。


「だからって、どうしてこんな気持ちになってしまったの…。」 

キーラと並んだジョーンズはとてもお似合いで、キーラの瞳からはジョーンズへの情が溢れていたのを思い出すだけで、息苦しくなる。 

コン、コンッ 

「ルビー、ちょっといいかな?」 

「どうしたのジョー?」 

「少し話したいことがあるんだ。来てもらえるか?」 

部屋から出てきたルビーの手を引いて、ソファに座らせるとジョーンズはルビーの隣に腰を掛けた。 

「ルビー、さっきは悪かった。偶然とはいえルビーに嫌な思いをさせてしまった。」 

「気にしないで、ジョーンズ。私なら大丈夫よ。」 

「ルビーにそう言われるのが一番こたえるんだけどな…。でも早く言い訳させてほしい。あの時会ったカルバイン侯爵令嬢は、俺が隣国にいた時お世話になった人の娘なんだ。 

ルビーが結婚してしまって逃げるように隣国に住み始めた俺は、情けないけど憔悴していて周囲の人たちを心配させてしまっていたらしい。そんなときにあのカルバイン侯爵令嬢が俺の周辺によく現れるようになったんだ。 

さすがに色恋に疎い俺でも分かるくらいに、彼女の気持ちが伝わってきた。 」

「本当にあなたのことが好きだったのね…。」

そう言ってわずかにうつむいてしまったルビーの手をジョーンズは優しく握った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?

わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。 分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。 真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...