愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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嵐と静けさ

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「ノア様!いやよ、嫌!離れたくないっ」 

「うるさい…。私の名前をこれ以上呼んだら許さない。お前の家に今日のことは強く抗議しておいてやる。楽しみにしておくんだな!行けっ!」 

嵐が過ぎ、ジョーンズは大きく肩を揺らしため息つこうとした瞬間、背後から聞こえてきた声に息を詰まらせた。


「…そのままで良かったんじゃないの?ねえ、ジョーもそう思うでしょ?」 

「ああ…そうだな。そしていろいろな意味で強烈だった。今日は、部屋まで送るよ、ルビー。」 

 
「なっ、いつからそこにいたんだ…駄目だ、駄目だ、駄目だ!!お願いだルビーッ!ちょっと…ちょっと待ってくれ!」 

再びルビーにあんな場面を見られてしまったと愕然とするジョーンズの願いもむなしく、ルビーはジョーンズと離れへ悠然と歩いて行ったのだった。 



無言でゆっくりとルビーの歩調に合わせて歩くジョーンズも、その安定感のあるエスコートに身を任せているルビーも終始無言で離れの前までたどり着いた。 

「ルビー、なんて言ったらいいんだ、こういう時。大丈夫か…は、ありきたりか…。」 

「ジョー私なら平気よ。最初っから夫婦の寝室で見せつけられてるんだもの。あれに比べたらさっきのなんて何でもないわ。」 

「ルビー…」 

「……ジョー?その…もしジョーが良ければ是非お茶を一杯だけでいいから付き合ってもらえるかしら…。その、変な意味ではなくて、少しだけまだ一緒にいてほしいの。」 

「いいのか?ルビー?」 

「もちろんよ。私がお願いしてるのだもの。ね、お願い…。」 

「分かった。一杯だけ…俺もこのままルビーを一人残しておきたくはないし。」 

「よかった。ありがとう、ジョー。」 
 

ルビーの住む離れはこじんまりしているものの、趣味の良い壁紙や調度品などで飾られた部屋は女性らしく落ち着きのある空間が広がっていた。 

部屋に入ったルビーとジョーンズは当たり前のように隣り合わせでソファに腰かけた。 


屋敷に戻ってきた途端、ルビーの目に飛び込んできたのは夫のノアと元親友のカミラが抱き合って口づけを交わす場面だった。 

夫婦の寝室で睦みあうのを見るのよりはましだとジョーンズには言ったが、やはり複雑な気分になってしまったルビーは、まだどうしても一人にはなりたくはなかった。 
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