愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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痛い勘違い

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日々憔悴ていくノアだったが、ルビーにこれ以上情けない姿は見せられないと身だしなみにいつも以上に気を配り、いつどこでルビーが自分を視界に入れても好感を持ってもらおうとしていた。 

先日の友人が、とりあえずそのやつれた姿をどうにかして、またルビーに見惚れてもらえるよう、その見た目だけでもどうにかしてみてはとアドバイスをくれたのだ。 

追い込まれていたノアは、とにかくその友人の助言に縋るように、目に隈をこしらえてはいるがいつも身ぎれいな姿でいるように心がけていた。 

しかし、そんな夫の苦労など知る由もなくノアに目もくれないルビーは、その日もジョーンズと出かけていった。 

そろそろルビーが帰ってくる頃だろうと、相変わらず門の方を見てはそわそわとしていたノアは、馬車が止まったのを目にした。 

やっとルビーが帰ってきたと安堵したノアは、次の瞬間、馬車から女性が一人で降りてくるのを目にし、我を忘れて駆けつけていった。 

「ルビーッ」

女性が一人で降りてきたのを見て、ルビーが一人で屋敷に戻ってきたとノアは直感した。 

外が暗く見えにくかったため、馬車についている家紋もその人物の顔も確認が出来なかったノアは、すっかりそれがルビーだと信じ切ってしまっていた。  

「えっ?」

息を切らして一目散に駆け付けたノアがその人物を目の前にして、しまった!と思った瞬間には、きつい香水を纏った女が既にノアにまとわりついていた。 

「ノア様!!やっぱり私に会いたかったのね!嬉しい!!お父様に屋敷から出るなって言われてたけど、どうしてもノア様に会いたくなって無理してでも来て本当に良かった!!!やっぱりルビーより私のことを愛してくれているのね!!」 

一気にそうまくし立てたカミラは、引き離そうとするノアに縋りつくように抱きつき、むりやり口づけをしてきた。 

「くそっ!ルビーじゃなかったのか??!!おいっ!!なにしてるんだ!ぼぅっとみてないで早くこの女を私から引きはがすんだ!!」 

一瞬の出来事に護衛らも固まってしまっていたが、べっとりとカミラの口紅が不快なほど付着した主人の声で一同がやっと我に返り、カミラをノアから引きはがしにかかった。 
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