愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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父の後悔

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「お父様、ありがとうございます…。夫が浮気したくらいで…なんて貴族ではよく言われてますけど、まさか私達がこんなことになるなんて…。しばらくこちらでお世話になってこれからどうしたいのか考えさせてもらってもよろしいでしょうか。」 

「ああ、もちろんだ。」
「もちろんよ、ルビー。そうね、私たちは大事な娘に心から幸せになってほしいの。だから、これからのことをゆっくりと考えたらいいわ。いつでも私達が力になるから…。」 


「ありがとうございます。お父様、お母様…。」 

そうして微笑んで見せる愛娘をルビーの母はぎゅっと抱きしめた。 


その後、執務に戻ったルビーの父は怒りを爆発させていた。 

「何がルビーを必ず幸せにします、だ。ルビーを愛してる?何をほざいているんだあいつは…!!くそっ!!こうなると分かっていたら、ルビーを嫁に出すんじゃなかった!!」 

「旦那様…お気持ちは察しますが…その調子でいけばペンが何本あっても足りなくなりますので…。いや、その書類は丁重に..ああっ!」 

 不貞を重ねた挙句、可愛い愛娘に夫婦の寝室でなんてものを見せつけたのだと怒りが収まりそうにないアボット伯爵は、どうしても手につかない執務の手を止めて天井を仰いだ。 

それなのに怒りを鎮めようとしていたアボット伯爵を嘲笑うかのようにノアの来訪が告げられた。

「旦那様…ノア・マクアベル伯爵がお嬢様に会わせてほしいとまたいらっしゃっております。言われた通り、門の外で待っていただいておりますがどういたしましょうか。」 

「今あいつの顔を目の前にしたら私はどうにかなりそうだ。帰ってもらえ。いいな、一歩も屋敷に入れるんじゃないぞ?」 

「…畏まりました。」 

どんな顔をぶら下げて娘に会いにこれるのだと、窓の隅からそっと外を窺ったルビーの父は、門前払いを受けて喚いているノアと不意に目があった。

死にそうな顔を向けるノアはそのまま無言でルビーの父に頭を下げ続けた。
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