愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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アボット伯爵家1

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「ルビー!おかえり。突然でびっくりしたが嬉しいよ。疲れているんじゃないか?顔色がさえない。とにかく部屋に行ってゆっくり休むと良い。」 

「お父様、何の知らせもせず突然帰って来て驚かせてしまいましたね。申し訳ございません。」 

「ルビー、何を言っているの。そんなこと気にしなくたっていいのよ?ゆっくりして行きなさいね?」 

「…ありがとうございます、お父様、お母さま。」 

 
何の前触れもなくやって来た娘に嬉しさを感じつつも、その表情からきっと何かが起きたのだろうとルビーの両親であるアボット伯爵夫妻は心配になった。 

「あなた…あの娘に一体何があったのかしら…。」 

「ああ…、少し探りを入れてみるか…。とにかくルビーを今はそっとしておいてやろう。」

娘が心配で何があったのか聞き出したい気持ちはあったが、疲れ切った娘に今は体を休めてもらうことが先だと思考を巡らせた。 


「旦那様、失礼します。ノア・マクベル伯爵がルビーお嬢様にお会いになりたいといらっしゃいました。今、門の前で待っていただいておりますが、どのように致しましょうか?」 

「ノア殿か。ルビーを追ってきたのか。やはり何かあったようだな…。分かった、客間に通してくれ。」 

「畏まりました。」 

そう言って、踵を返しルビーの夫であるマクベル伯爵を客間へ通すため立ち去った執事を見送ったルビーの父は、妻に気が疲れないようにため息をついた。 

政略的な結びつきの強い縁談だったが、大事な娘のルビーに良かれと思ってあの男を選んだというのに。

娘のことを大事に想ってくれていると信じていたが。

先日知り合いが言っていたことは本当だったのかもしれないと怒りと落胆を感じつつも、アボット伯爵は妻を伴って客間へ移動した。 
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