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セーレ

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エラルドが去って二週間後に俺とリアの二人目となるリアにそっくりなビアンカが生まれた。相変わらず髪色だけは俺に似て真っ黒だがそれ以外はまるでリアそのものだ。 

成長するにつれ変な虫が付きやしないか心配になる俺をよそに、リアそっくりなビアンカはまっすぐに聡明に育ってくれている。 

 

「セーレ、ジュリアお邪魔するよ。」 

「よおアデルモ。」 

「いらっしゃいお兄様。ようこそおいで下さいました。」 

「なーにがようこそおいで下さいました、だ。こいつしょっちゅうしょっちゅう来てんじゃねーかよ。暇なんだろ?」 

「ははは!そうだよ、私は公爵だからね。人をこきつかってこその公爵様さ。」 

おどけているが、この男がめちゃくちゃ忙しいのを知っている。 

「セーレが君たちのところに瞬間移動できるようにしてくれたおかげさ。」 

「あっ!アデルモ叔父様!ビアンカおいで、アデルモ叔父様が来てくれたよ!」 

ネフィリムもビアンカもリアの兄のアデルモにすっかりなついて、顔を見た瞬間には二人して飛びついている。 

「やあ、ネフィリム。7歳の誕生日おめでとう。」 

「うわあ!やったーアデルモ叔父さんありがとうございます!」 

いつものごとく姪っ子甥っ子に甘いこの男は、一度では抱えきれなかったからと言って、瞬間移動でプレゼントを持ってくるために何度も何度も移動を繰り返している。 

一見真面目そうに見えるこの男がこうしてプレゼントを移動させるために瞬間移動をして行ったり来たりしている姿が滑稽でついつい笑ってしまう。 

 

気が付けばいつの間にかプレゼントが山積みになっていて、ネフィリムが歓声を上げた。 

「ほら、後、これはビアンカにだよ。」 

そう言って自分より大きなアヒルのぬいぐるみを幼いビアンカにあげているアデルモは至極真面目な顔をしているのが面白くてたまらない。 ここはクマかうさぎとかだろう。なぜアヒルなんだと心の中で突っ込みを入れる。

「おじちゃまありがとう!すっごくおっきなカモね!」 

「アヒルだよビアンカ。」 

「お兄様いつもありがとうございます。」 

そう言って皆を微笑ましく眺めていたリアが礼を言った。 

「おっ…やっと来たか…」 

俺がそういうとアデルモとリアの視線も玄関先で息を切らしている男に向いていた。 

「ハァーハァー…間に合った…のか?」 

「よお、エラルド。よく来たな。」 

「セーレ、ジュリア…にアデルモ殿もいるのか…?」 

「エラルド様お先に失礼していますよ。」 

「ああ。…というか、アデルモ殿、君ここにつくの早すぎやしないか?!国を立つときに確かアデルモ殿に挨拶したよね?!…はっ!セーレ殿、君たちたち何故ロプノール王国に越してきてないんだ?そうしたらもっと簡単に君たちに会えるようになるのに。それにこんな大事なことならもっと早くに知らせてくれ…っと、ネフィリム!ネフィリム…大きくなったね…」 

「はい、初めまして。ネフィリムと申します。」 

「…初めまして…ではないんだけどな。君が小さなころに一度会ってるんだ。私はエラルド。エラルド叔父さんとでも呼んでくれ。君の父上と母上の昔からの友達だよ。仲良くしてくれると嬉しい。」 

「はい!エラルドおじさん、こちらこそよろしくお願いします!あっ、こっちは僕の妹でビアンカっていうんだ。」 

「えラウドおじちゃっちゃ、こんちは!」 

「ああ、こんにちは、ビアンカ。よろしく頼むよ。君があの時のお腹の子か。君の母上にそっくりだな。」 

 

知り合いなんて一人もいなかった人間界に飛び出た瞬間にリアに出会い、それからアデルモにエラルドと軽愚痴を言い合える仲なり、幸運にもネフィリムとビアンカという宝物にも恵まれた。 

 

リアは俺の側が一番安心すると言っていつも小悪魔になって俺を翻弄してくる。そんなリアといるといつまでも幸福に浸っていられる。 

成り損ないだ出来損ないだと言われた俺たちは今もこれからもこうして幸せに暮らしていく。 

 
【完】

最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
 
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