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セーレ

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「ネフィリム、またお邪魔してるよ。ほら、来る途中で買ってきたんだ。旨そうだろ。後でみんなで一緒に食べよう。」 

「うわあい、ありがと、えらるどおじしゃん!」 

 

最初にエラルドがうちを訪ねて来てからもう既に三か月が過ぎた。 

季節も冬を迎え雪がちらつくようになっていた。 

小さな町だが宿はたくさんあるのでエラルドと護衛達はずっとそこで暮らしているらしい。 

毎日のように護衛を従えて、土産だと言っては菓子やらパン、おもちゃなどを持ってくる。おかげでネフィリムはエラルドが来るのが待ち遠しくなったというわけだ。 

 

リアは臨月を迎え、大きくなった胎を愛おしそうに撫で動きがゆったりとするようになってきた。 

俺は当然のごとくべったりとリアに寄り添い、リアが腰をさすろうものなら俺の魔法で腰を温めずっと優しくさすってやるようにしている。 

そんな俺たちを時折眩しそうに見つめるエラルドに気が付いてはいるが、今の状況を選んだのはあいつなのだから俺からあいつに言えることは何もない。 

「ジュリアとセーレ殿、少し時間を頂けるだろうか。」 

ジュリアと並んでソファに座るとエラルドが数枚の書類をさし差し出してきた。 

「私の方の記入はすべて済ましておいた。後は君の分だけだ。」 

それは離縁届で、エラルドの言うように、こいつの分の記入は全て済ませてあるようだった。 

「書類上だけでも君と繋がっていられるからと…長い間、一縷の望みに縋ってしまったが…ジュリア。君のこんな幸せな姿を見ていると嫌でも分かってしまったよ。もう私に望みはない…君の新しい家族が増える前にも…きちんと君を解放したほうがいいとね…。きみにはつらい想いしかさせてなかったけど、最後に…私が君にできる唯一の誠意っていうのかな。…長い間決心がつかなくて君たちを追いかけまわしたりして本当に申し訳なかった。」 

リアはじっとエラルドを見据えるとふわっと笑みをこぼした。 

俺以外にこの笑みを向けられるエラルドにイラっとしたが、まあ、今回ばかりは仕方ねえか…。 

「君がそんな風にして私に微笑んでくれるのも本当に久しぶりだ。…ああ、これで良かったんだな…」 

リアはすぐに書類を確認してサインを済ませた。 

まあ考えたらなんだ。自業自得でざまあねえ男だし、しつこくジュリアを探し回ってはまとわりついていたような男だけど…俺、別にこいつのこと嫌いではないんだよなあ。 
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