出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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エラルド

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結局その後ジュリアの行方が全く分からず、行き当たりばったりのの長い旅が続いた。しかししばらく必死に捜索していると、とんでもない美貌を持った美しい男女がこの先にある小さな町で暮らしているらしいと耳にした。 

『緩やかで艶めくような銀髪に、透けるような肌で、すべてを映しこむような大きな紫の瞳を持った女性でしたよ。声は穏やかで品があり、だからと言っておごることなくこの上なく親切でね。同性なのに思わずドキドキしてしてしまって… 

男性の方も例えようがないほど美しかったんですよ。黒髪が風で少しなびいただけだったのにとんでもない色香を放っていて………』 

偶然、昼食に立ち寄った店で、私たちが探している人物と聞いた従業員の一人が、そういえばとんでもなく美しい夫婦を見たと頬を紅潮させながらその二人の特徴を話して聞かせてくれて、それがジュリアたちだと確信を持った。

私は藁にも縋るおもいで周辺を聞き込み、やっとの思いでジュリアの住む小さな町にたどり着いた。 

「っ!!」 

ただ、町に足を踏み入れようとすると、なぜか私と護衛達だけがはじき返されてしまう。他の人々は何をしているんだという風に私たちを不審な目を向けて来る。 

間違いない。ジュリアはここにいる―――。 

 

以前湖畔でジュリアに近づこうとした時にはじき返された感触と同様のものを感じ、間違いなくジュリアはこの町にいるのだと確信した。 

やっとだ…やっとジュリアにたどり着けそうだと思ったら何度はじき返されても何日も何日も繰り返し見えない何かにはじき返される日々を半年もの間過ごした。 

気が付けば旅に出て三年が過ぎていた。 

 

「兄ちゃん頑張んな!なんかよくわからねえけどよ、毎日毎日頑張る姿見てたら応援したくなっちまったぜ!ほら、これ食って力尽けろよ!」 

「お兄ちゃん頑張れー!!!」 

 

毎日凝りもせずはじき返される私を励まそうと、いつの間にかここら近辺の者たちが集まって私を励ましてくれるようになっていた。 

 

『懲りない男だな。しつこい奴は俺、嫌いだけどまあいっか。ただしジュリアを傷つけるようなことをしようもんならお前ら全員畑の野菜に変えてやる。土の中でその実がどんどん育っていくまで毎日肥料と水まみれにして動けなくして、頃合いを見てその髪を引っ張って引っこ抜いて…くっくっくっ…』 

 

「な…なんだこの声は…というか意味が分からんぞ…」 

突如頭の中に聞こえてきた声に混乱している間に、気が付けば私はその小さな町の中に足を踏み入れていた。 

 

「エラルド様っ…!!!」 

「おおおお!!!兄ちゃんたちよかったなあ!!!!」 

「おめでとーーーー!!!」 

 

呆然と立ちつくす私たちの周りには人だかりができて、皆、興奮して大騒ぎになっていた。 

 

「ああ、やっと…やっとか…やっと…」 

応援してくれた者たちに礼を告げてジュリアの目撃情報をたどりつつ、ようやくジュリアの住む屋敷にたどり着いた。 
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