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セーレ

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意識が戻ったとき、魔力封じはまだ嵌められていて、腹も背中も血がべったりこびりついたままだ。 

 

「おーやっと目を醒ましたかセーレ。よっしゃもう一度俺とあそぼーぜー」 

「お前みてーに暇じゃねーんだよベニート」 

「良かったぜ人間界でお前が罠にかかって魔力封じを浴びてくれてよー。じゃなきゃお前みたいな馬鹿力を連れて帰れねーからなー。ほらほら優しーお兄様が牢からだしてやるよー。」 

ガッ!! 

「っぐふぅっ!!!…お、お前魔封じをどうしたんだ…」 

「やることがお粗末なんだよ、魔封じなんか俺に使いやがって。」 

 

「セーレ」 

「父上、なぜここへ」 

「こうなるだろうと思っていた。…お前がベニートに勝利したらお前を自由にしてやるとしよう。殺すなよ?」 

「何を、父上!」 

「セーレ、お前が負けたらお前が魔界から出られなくなるよう処置する。以上。では始め。」 

「強引だな。まあいいか…おいおい、セーレちゃんよお。もお逃げんのかあ?父上やほかの者たちの居る広間で戦った方が俺の手間も省けるのによお。父上はセーレ、お前を生かせと言ったが俺はお前を殺すぜ?ぎゃははははっ!!!」 

ドドドドドドドドドッッ 

「ぐぅっ」 

「痛ってーのかあ?ぎゃははははっ!!」 

ドゴォン!!! 

「おっとー、思わず当てちまったなあ。痛かったかぁセーレ。血だらけじゃねえかよお。魔封じ外すのに魔力消費しちまったのかー??ばっかなやつだなー!」 

「ぐぅっ…」 

「腹から血ぃながしてるところに蹴りいれちまったなあ。血が止まんねんなあ―セーレ!…ぐっ!」 

「帰るって約束したんだよっ…」 

「は?なんだって?帰るって約束しただあ?ぎゃははっ!帰りてえのかあ?怒ったのかあ?だからと言って兄を蹴り飛ばすなんていけない弟だなあ…ぐふっ!!!」 

「ぺらぺらうるせーんだよ。兄上こそ頭から血が出てるぞ」 

ドゴォンッ! 

 

 

「そこまでだセーレ。」 

目の前には地面に突っ伏してしまった兄ベニートとまっすぐに俺を見据える父上でもある陛下がいた。 

「お前の勝ちだ。…お前を待つものが向こうにいるのか?」 

「... 」 

「…そうか。セーレ。これをお前に。」 

「これは?] 

「これからお前がもし万が一人間の女と添い遂げるのならこの指輪を使え。ああ、必要ないなら灰にすればいい。もう我々がお前を追いかけることはないだろう…行けセーレ。達者でな。」 

「…父上も。」 

 

これが俺が父上を、いや、魔族を見た最後になった。 

だから俺がいなくなった後、父上が一人でつぶやいていた言葉など知る由もなかった。 

 

「出来損ない王子…か。はははっやっぱりあいつは俺の子だったということだな…」 
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