出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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『なんでわかったんだあいつ…』 

セーレが独り言ちた言葉を思い出して、セーレに何か良くないことが起きたのではないかと胸騒ぎがおさまりません。 


ーーーー

 「なんでお前がここにいる?」 

「セーレ様、やっとセーレ様を見つけることが出来た…」」 

「おい、どうやって俺の居場所が分かったんだ」 

「セーレ様が魔界から出て行かれる瞬間に追跡獣をあなたの背中に…すぐにここにきてセーレ様の洗浄魔法で死んでしまったみたいですけれどもですけれどもおかげでセーレ様の後を追うことが出来た…セーレ様、セーレ様。会いたかった…」 

「何度も伝えたはずだ。俺はお前が嫌いだ。」 

「嫌い?ふふふっ。セーレ様ったらそんな回りくどい言い方をしなくとも分かっていますわ。嫌いの反対は好き。つまりセーレ様は私のことを愛してくださっておられるのよね?…嬉しい…セーレ様のためにセーレ様にまとわりつく女たちを殺して魔獣のえさにするのも楽しかったわ。下等魔族達の中に放り込むのも本当に愉快だったけど。ふふっ。それなのにいくら殺しても次から次に女たちがセーレ様にすり寄ろうとして…、まあそれだけセーレ様が素敵だって証明しているってことよね。もう邪魔者はいないわセーレ様。ここはちっぽけな人間の世界。さあ!もう何の遠慮もいらないわセーレ様!」 

「相変わらず話が通じねーなー気持ち悪い女」 

「やだっ…気持ち悪いだなんて…そんな誉め言葉をセーレ様にいただけるだなんてっ…ほかの男たちがどんなに私のことを愛でて来ても、セーレ様にはかなわないわ!一度も私に触れてくれないのはセーレ様だけ。それだけ私のことを…大事に想ってくれているのですよね?」 

「いやいやいやいやないないない。断じてそれはない。おいおいおいおいおい、こっちに近寄るな殺すぞ。」 

「またそんなことおっしゃって。セーレ様が出来損ないの王子って呼ばれても私は気にしないわ!魔族の王子なのに冷酷になり切れないそんなセーレ様も私ならすべて受け入れられる…うっ」 

「いい加減うるせーんだよ。ぺらぺらぺらぺら喋りやがって。魔界に戻らねーっつうんなら殺すぞ。」 

「セーレ様が私を殺す?ふふふっそんなこと言って、セーレ様が本当に私を殺すはずないじゃないですか。あら、あそこがセーレ様のお屋敷ね。さあセーレ様一緒に行きましょう。セーレ様の部屋でセーレ様と早く一つになりたいっ…」 

「うっへー!鳥肌立った!馬鹿かお前は。お前とそんなことするわけねーだろ。頭がおかしいんじゃねえか?いや、とっくの昔からおかしいんだったな。おい、近づくなよ。やべーなお前…」 

「…セーレ様…ん?なぜあなた様から人間の女の匂いがするのですか?もしかしてっ…」 

もしかして人間の女をかこっている?…と小声でつぶやいた女の目が大きく見開き屋敷に視線を向けたことなど知る由もありませんでした。
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