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エラルド

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ならばジュリアと私の夫婦の寝室だけでもいっしょに使おうなどとのたまうが、ロレッタに使わせようなどとは思えなかった。ジュリアと私の神聖な何かがロレッタにけがされる気がした。今更だ。 

これまでジュリアが忙しくしているからなどと言ってさんざんロレッタとの時間を過ごしてきたというのに。 

ジュリアが生贄になったあの日からもう、ロレッタと肌を合わせようなどという気には到底なることなど出来なかった。 

世継ぎを作らなければならないとまわりに言われようとも、閨を私に拒否され続けて、ロレッタの機嫌が日に日にすこぶる悪化しているようだと側付きの者たちに伝えられようが、私の気持ちも体もロレッタと肌を合わせることを拒否しているのだからどうしようもない。 

ロレッタ付きの教育係はどんどんと匙を投げてやめて行き、もう、今教えてくれている者たちがいなくなれば後がないのではないかとさえ思っている。 

どうしてこんなことになったのだろう。 

『ロレッタには世継ぎを産むことに専念させて、優秀な者たちに王妃の仕事を割り振りしたらいいではないですか。』 

ロレッタの実父で宰相のノンベルト侯爵がついにそんなバカげたことをのたまった。 

ジュリアの努力の甲斐あってやっとここまで国が潤ってきたとはいえ、王妃がいない今、側妃を使わずに、税金で何人もの優秀なものを雇い仕事をさせたらいいという発想に聞く気さえ失せた。 



「兄上、入りますよ。」 

「ああ、カストか。入れ。」 

カストが今はジュリアの仕事を引き受けてくれている。ジュリア付きだった側近は職務怠慢で追放し、新たに優秀なものたちにカストの側近として手伝ってもらっている。 

「兄上、ジュリア義姉上は本当にすごいですね。義姉上の残していかれた仕事はとても複雑で難解で一筋縄ではいかないものばかりだ。少し間違えただけでこちらの国が足をすくわれ、大変なことになる。しかし義姉上はこれらをずっとほとんどお一人でやってこられたのだからすごい。どれだけの努力と時間を費やしたのか想像するだけでも尊敬に値する。」 

「ああジュリアは本当に…素晴らしい王妃で、私の自慢の妻で……」 

自分でそんなことを言って喉が詰まって言葉が出てこなくなった。 

「兄上、…しかし今更ですね。義姉上の献身を一番に理解しておられたはずの兄上がまさかと思いましたよ。義姉上が兄上を心から慕っていたことなど分かりきっていたのでしょう?義姉上がここまで頑張ってきたのはあなたのためだ、兄上。それなのに兄上は義姉上を裏切り、姉上を労わらずに側妃と過ごすようになった。義姉上がどれだけ悲しまれたことか。あんな側妃など娶る必要もなかったというのに。兄上、なぜこうなった。 

それに出来損ないの王妃と義姉上が陰でののしられていたのを兄上はなぜ放置した?何度も兄上に忠告させて頂きましたよね?…差し出がましいことばかり申し上げてしまいましたね。…では私は失礼します。こうして話している時間さえ惜しくなるほどすべきことが山積みですので。義姉上が寝る間も惜しんで頑張っておられたはずですよ。では。」 

いつも私に従順な弟がこのように率直に私に意見を述べるのは初めてのことだった。カストはジュリアを本当の姉のように慕い、ジュリアもカストを本当にかわいがってくれていたのを思い出した。
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