出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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今回のことの次第を知った国民は王と宰相,側妃に嫌悪をあらわにし、国民からは浮気王、寝取り上手な側妃様と狡猾宰相と皮肉られ、至る所で悲劇の王妃の物語を上演してはそれが大うけする始末だ。 

何せジュリアは国民の生活の安全、衛生面での改善、被災地の早期立て直し、貧しい者たちへの無料教育機関の設立に食糧支援、それらを施行する際に必要となる人件を職にあぶれている者たちにあてがい、隣国との貿易の拡大で市場が活性化させたのだ。

数えきれないほどの職を国民に提供し功績を残してきた。世界最強と謳われる隣国とも堂々と交渉を重ね、彼らと渡り合ったジュリアの手腕と度胸を国民は高く評価し称えている。 

そう。少し前までこの国は度重なる災害により疲弊し数多くの国民は苦しい生活を強いられていた。だから国民にとって、ジュリアは救世主であり、この国の自慢の王妃なのだ。 

たとえ王宮からかジュリアがいなくなろうとも、彼らにとっての王妃とはジュリアただ一人だけでしかないのだろう。 

そしてそれは私も同じであったはずなのに、いつの間にかそんなことすら忘れた愚王となっていたのだ。 

 

献身的に支え励んでくれ続けていた幼いころのジュリアはとても小さくてかわいい女の子だった。こんな小さな可愛い少女が頑張っているのだからと私も刺激されて私も頑張って来れた。成長するにつれ様々な場面で自分を支え寄り添い続けて来てくれたジュリアを思い出す。

父王を亡くした時に悲観に暮れ心細く不安定な気持ちをどうにか周りに悟られないように必死だったころ、大丈夫だと背中をさすり、苦しい中いつも寄り添い続けてくれたジュリア。 

誰よりも大切な存在で愛おしいジュリア。今更そんなことを想うだなんて手遅れだと理解してはいるのだが。 

どんなに苦しい時もずっと私のそばに寄り添いが励まし、時には自らが私の代わりに矢面になってまで守ってくれたジュリア。 

当たり前のようにずっと隣にいてくれたジュリアがいなくなって、毎晩ジュリアの夢を見るようになった。目が醒めた後は後悔と虚しさに苛まれ、ジュリアがどれほど自分にとって大切な存在であったのかと、そんなジュリアを二度も失ってしまったことに絶望を感じた。 

これまでの献身を思い出し、幼き日よりの想い出を思い出しては懐かしみ、ジュリアの温かさを感じなくなった夫婦の寝室で一人寝をする寂しさに耐え、使うものの居なくなってしまった王妃の間に一人たたずみ、戻ってくるはずのない王妃を待ち続ける。 

王妃はいないのだからと王妃の間に無理やり移ってこようとしてくる側妃ロレッタを近衛兵が毎度のごとく止め、その後宰相が私を説得しようと試みるが、私は決してそこだけは譲らなかった。 
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