出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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「ーー陛下、ご存じでしたか? 

ジュリアが幼少の頃より両親や妹に虐げられ続けていたこと。 

ジュリアが幼少の頃より両親であるリベラート公爵夫妻の仕事を押し付けられ、さらに王太子妃教育をしていたからほぼ寝る時間が2-3時間しかなかったこと。 

ジュリアがそんなにひたすらに頑張ってきたのはすべて陛下のためだったこと。 

王宮でのジュリアの食事すべてに虫が入っており、腐った魚や肉を提供され続けていたこと。 

一人で食事する時は冷めた具なしスープに石のように固いパン一つだったこと。 

侍女達はジュリアの呼び出しに応えないしジュリアの世話を放棄していたこと。 

ジュリア帰還の顔見世の日、侍女らが着替えも手伝わないのでドレスのまま執務をしていたこと。 

髪を結われた際にきつく引っ張り結ばれていたため、頭皮が赤くはれていたこと。 

 

衣裳部屋には兄である私の贈ったドレス一着しかなかった、それ以外は質素なデイドレスだけだったこと。ええ、王妃であるのにですよ? 

宝飾品もほとんど消えていた。 どこに消えたのでしょうね。

執務の中に、側妃でもできるような簡単なもの、宰相がすべきもの、文官あるいは騎士団ですべきものが多く含まれていたこと 

城中の者が王妃をないがしろにし、出来損ない、死に損ない、傷物王妃と蔑んでいたこと。 

ああ、私は記憶力が良いですから…一人残らずじっくりと追いつめて行ってさしあげよう。 

護衛も侍女も仕事を放棄し、王妃だというのに一人で行動を余儀なくされていたこと。 

側近たちが仕事を長く放棄していたこと。 

ジュリアが熱を出して倒れた際の執務室と私室の惨状はご存じか? 

熱を出して誰にも介抱されず、幽鬼のように通路を一人歩いて私室に戻ったジュリア状況を。 皆笑っていたそうですよ。

ジュリアが…妹がっ…一体貴殿らに何をしたというのだ。なぜジュリアだけこんな目に合わなければならないっ? 

陛下、なぜジュリアが襲われていた時にジュリアを信じてやれなかった?長年寄り添ったジュリアより側妃の言い分を信じたあなた様が出した答えがそこにあるのでしょう? 

…失礼する。」 

幼いころより兄のように慕っていたアデルモに突き放された瞬間だった。 


私たちの周囲には多くの者たちがいたが皆が口を噤んだ。誰一人として口を開くものはおらず、ただロレッタと宰相だけが何かを言っていた気がする。 

以後一切アデルモが登城をすることも王宮主催の夜会に参加することもなくなった。 
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