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セーレの手を取った瞬間、体がふっと浮いて気が付けば無人島の屋敷に戻っておりました。 

 

「…腹減ったな、何か食おうぜ。」 

「ええ、セーレ。あと、ただいま帰りました。」 

「ああ…お帰り。ほらぼおっとすんな。早く座れよ。ったく、あそこまでするとはなー。人間こっえー。っつーかお前も少しはやり返せばよかったんだ。…もうあんな無茶すんなよ。」 

今回は私の額に触れることなくテーブルの上に料理が並びました。 

「くはっ!!あの城でお前が苦労してた間にあいつらが食ってた料理だよ。ついでにあそこの食糧貯蔵庫の中身全部掻っ攫ってきたぜ。くくくっ…ざまーみろってんだ。今頃腹すかした奴が大騒ぎしてんじゃねーか?」 
「セーレったら…ふふふっ」 

「なんだお前、おもしれ―奴だな、ここで笑うか?!くはっ!

あの城でお前を苦しめてたすべての奴らが寝具を敷くたびに腐った匂いが湧く魔法と、あそこで食う者、飲む物の中にはもれなく虫が湧くように魔法をかけてきたぜ。

目の前に出された旨そうな肉も魚も野菜も本人を目の前にすると腐っちまうんだ。どろっどろにな!なんだこりゃスープかソースじゃねーのかってくらいにな!!

後はなんだっけ?ああそうそう!冬でもいつでも湯あみの時は冷水になるんだぜ?!ぎゃははははっ!!

あの側妃の女は口臭が便所より臭くなるようにした。本人だけ気が付かないんだぜえっ!最高だろっ?!すました顔したあの芋女め!ざっまーみろ!

そうだ、あの宰相は毛が全部抜ける魔法をかけといた。一本一本残らずはげるまでじっくりと根っこから抜ける魔法だぜ。すっげ―地味な痛さが延々と続いてたっまんねーだろーな。頭から足の指まですべての毛だからなー。今頃転げまわってんじゃねえか。ざまーみろってんだ!俺は悪魔だからな、人の不幸は本当に楽しいんだよ。」 

「まあ、セーレったら…」 

「怖えーか?」 

「もちろん…ふっ」 

なんだお前も悪魔みたいだな、と笑うセーレを見ていると、悪魔になってもそれはそれでいいかと思ってしまったのでした。 

「ところでお前の足だけどな、ほれ、これやるよ。」

「これは…?」

「毒消しだ。それ探すのに手間取っちまった。辺境の男好きのおしゃべりなばあさんが唯一毒消し作れるとかあの馬鹿な奴らが言ってたの聞いたから、行ってきたんだけどな。…地獄を見たぜ…」
「地獄…」

「「はっらーん♪はっらーん♪」なんつって意味が分からねー歌、突然うたいだしてよ。俺の近くにきて匂い嗅ぎ出して…うぷっ…ジュリアの症状を伝えて毒消し作ってくれって頼んだらよ、「し・け・く・ど(毒消し)ーーー♪きゃあふっ!!」だってよ。逆から言うんじゃねーってんだっ!」

「それはまた…すごいおばあさんですね…」

「「カニはガニ股より内股が好き、プリンはプルプルよりやっぱりプリンプリンよ!きいてるのお?!おい!!!」とかなんとかぬかしやがってたのが、いきなり図太てー声で威嚇して来んだ…

こっちは急いでるんだっつったら、仕方ねーからあっちに向いてもこっちに向いてもホイで勝ったら薬をくれるっつうんで勝負したんだ。そしたらばあちゃんめっちゃつえーんだって。あっちに向いてもこっちに向いてもだめっつうからめっちゃ難しかったんだぜ…」

「あっちに向いてもこっちに向いてもだめ…」

その後、そんなことどうでも良いからと、話を止めたセーレにとにかく早く飲むように促されて薬を頂きました。
私の足が治ったのを見てほっとしているセーレを見て、なぜだかようやく帰ってこれたのだと感じたのでした。
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