52 / 100
51
しおりを挟む
「…お前みたいのは初めてだから混乱するぜ。なんの欲もねえじゃねえかよ。
いつまでも俺に何も聞かねえし頼まねえし、笑わねえ、怒らねえ、欲しがらねえ。いいか?俺ら悪魔ってえのはどれだけ相手を貶めて苦しめるかってのが重要なんだよ。お前みたいになんの欲もなくてついでにいつでも死んでもいいと思っている奴、俺にどうしろっていうんだよ。
お前が苦しんでるのを見ててすげー胸糞悪くなったぜ…どうしちまったんだ俺…お前…なんの欲もねえじゃねえかよ。お前もう充分苦しんだろ?……もう充分だ。もうやめてくれ。」
王宮に戻って来てから始めて私の前にセーレが現れ私と対面しておりますとお兄様が一歩セーレに近づきました。
「貴殿が妹を…ジュリアを以前連れ去ったお方か?」
「そうだ。」
「貴殿はジュリアをジュリアとしてみてくださるか?」
「ジュリアをジュリアとしてみる?わけわからねえな。ジュリアはジュリアだろうが。」
「そうか…そうか…どうぞジュリアをお願い致します。…ジュリア、行くんだ、後のことは心配いらない。」
フッと笑みをこぼしたお兄様は大きく私に向かって頷きました。
「お兄様…」
アデルモお兄様が私に大きく頷きます。
「さあ、帰るぞジュリア」
「帰る…セーレと一緒に?」
「ああ…そうだ。帰るぞジュリア。」
「ジュリア!どこに行くというんだ…帰る?どこに帰るんだ?その男は誰なんだっ?君の帰る場所は私の居る場所だろ?」
「エラルド様!そんな王妃なんて放っておけばいいのに!」
「君は側妃だ!ジュリアを王妃だなどと呼び捨てにするな!君は黙っていてくれ!ジュリア!どこにも行くな…行かないでくれ…」
じりじりとエラルドが私に近づいてきます。
「俺の手を取れジュリア。」
「行くなジュリア!放せロレッタ!」
「きゃあっ!!」
引きはがされて尻もちをついたロレッタに見向きもせずに、エラルドが私の方に血相を変えて駆けてきます。
「ジュリア!!!!」
「セーレはそれで嬉しいですか?」
私はエラルドとロレッタ様から視線を外しセーレに問いかけます。
「ああ。…嬉しい?と…思う…あーだから俺は成り損ないだなんていわれるんだろうなー。あ?なんだお前笑えんじゃねえか。」
「笑う?」
「ああ。まあ、いい。帰るぞ。」
「ジュリア幸せに」
「アデルモお兄様も。」
もう二度と会うことが出来ないかもしれないアデルモお兄様を瞳に焼き付けます。
「ジュリア待ってくれ!!!行かないでくれ!!!ジュリア!」
背後から聞こえて来るエラルドの声が空しく響いておりました。
いつまでも俺に何も聞かねえし頼まねえし、笑わねえ、怒らねえ、欲しがらねえ。いいか?俺ら悪魔ってえのはどれだけ相手を貶めて苦しめるかってのが重要なんだよ。お前みたいになんの欲もなくてついでにいつでも死んでもいいと思っている奴、俺にどうしろっていうんだよ。
お前が苦しんでるのを見ててすげー胸糞悪くなったぜ…どうしちまったんだ俺…お前…なんの欲もねえじゃねえかよ。お前もう充分苦しんだろ?……もう充分だ。もうやめてくれ。」
王宮に戻って来てから始めて私の前にセーレが現れ私と対面しておりますとお兄様が一歩セーレに近づきました。
「貴殿が妹を…ジュリアを以前連れ去ったお方か?」
「そうだ。」
「貴殿はジュリアをジュリアとしてみてくださるか?」
「ジュリアをジュリアとしてみる?わけわからねえな。ジュリアはジュリアだろうが。」
「そうか…そうか…どうぞジュリアをお願い致します。…ジュリア、行くんだ、後のことは心配いらない。」
フッと笑みをこぼしたお兄様は大きく私に向かって頷きました。
「お兄様…」
アデルモお兄様が私に大きく頷きます。
「さあ、帰るぞジュリア」
「帰る…セーレと一緒に?」
「ああ…そうだ。帰るぞジュリア。」
「ジュリア!どこに行くというんだ…帰る?どこに帰るんだ?その男は誰なんだっ?君の帰る場所は私の居る場所だろ?」
「エラルド様!そんな王妃なんて放っておけばいいのに!」
「君は側妃だ!ジュリアを王妃だなどと呼び捨てにするな!君は黙っていてくれ!ジュリア!どこにも行くな…行かないでくれ…」
じりじりとエラルドが私に近づいてきます。
「俺の手を取れジュリア。」
「行くなジュリア!放せロレッタ!」
「きゃあっ!!」
引きはがされて尻もちをついたロレッタに見向きもせずに、エラルドが私の方に血相を変えて駆けてきます。
「ジュリア!!!!」
「セーレはそれで嬉しいですか?」
私はエラルドとロレッタ様から視線を外しセーレに問いかけます。
「ああ。…嬉しい?と…思う…あーだから俺は成り損ないだなんていわれるんだろうなー。あ?なんだお前笑えんじゃねえか。」
「笑う?」
「ああ。まあ、いい。帰るぞ。」
「ジュリア幸せに」
「アデルモお兄様も。」
もう二度と会うことが出来ないかもしれないアデルモお兄様を瞳に焼き付けます。
「ジュリア待ってくれ!!!行かないでくれ!!!ジュリア!」
背後から聞こえて来るエラルドの声が空しく響いておりました。
198
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。

いくら時が戻っても
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。
庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。
思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは―――
短編予定。
救いなし予定。
ひたすらムカつくかもしれません。
嫌いな方は避けてください。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる