出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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「…お前みたいのは初めてだから混乱するぜ。なんの欲もねえじゃねえかよ。

いつまでも俺に何も聞かねえし頼まねえし、笑わねえ、怒らねえ、欲しがらねえ。いいか?俺ら悪魔ってえのはどれだけ相手を貶めて苦しめるかってのが重要なんだよ。お前みたいになんの欲もなくてついでにいつでも死んでもいいと思っている奴、俺にどうしろっていうんだよ。

お前が苦しんでるのを見ててすげー胸糞悪くなったぜ…どうしちまったんだ俺…お前…なんの欲もねえじゃねえかよ。お前もう充分苦しんだろ?……もう充分だ。もうやめてくれ。」 

王宮に戻って来てから始めて私の前にセーレが現れ私と対面しておりますとお兄様が一歩セーレに近づきました。



「貴殿が妹を…ジュリアを以前連れ去ったお方か?」 

「そうだ。」 

「貴殿はジュリアをジュリアとしてみてくださるか?」 

「ジュリアをジュリアとしてみる?わけわからねえな。ジュリアはジュリアだろうが。」 

「そうか…そうか…どうぞジュリアをお願い致します。…ジュリア、行くんだ、後のことは心配いらない。」 

フッと笑みをこぼしたお兄様は大きく私に向かって頷きました。

「お兄様…」 

アデルモお兄様が私に大きく頷きます。

「さあ、帰るぞジュリア」 

「帰る…セーレと一緒に?」 

「ああ…そうだ。帰るぞジュリア。」 

 

「ジュリア!どこに行くというんだ…帰る?どこに帰るんだ?その男は誰なんだっ?君の帰る場所は私の居る場所だろ?」 

「エラルド様!そんな王妃なんて放っておけばいいのに!」 

「君は側妃だ!ジュリアを王妃だなどと呼び捨てにするな!君は黙っていてくれ!ジュリア!どこにも行くな…行かないでくれ…」

 じりじりとエラルドが私に近づいてきます。


「俺の手を取れジュリア。」 

 

「行くなジュリア!放せロレッタ!」 

「きゃあっ!!」 

引きはがされて尻もちをついたロレッタに見向きもせずに、エラルドが私の方に血相を変えて駆けてきます。 

「ジュリア!!!!」 

 

「セーレはそれで嬉しいですか?」 

私はエラルドとロレッタ様から視線を外しセーレに問いかけます。

「ああ。…嬉しい?と…思う…あーだから俺は成り損ないだなんていわれるんだろうなー。あ?なんだお前笑えんじゃねえか。」 

「笑う?」 

「ああ。まあ、いい。帰るぞ。」 

「ジュリア幸せに」 

「アデルモお兄様も。」 

もう二度と会うことが出来ないかもしれないアデルモお兄様を瞳に焼き付けます。 

 

「ジュリア待ってくれ!!!行かないでくれ!!!ジュリア!」 

背後から聞こえて来るエラルドの声が空しく響いておりました。
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