上 下
48 / 100

47

しおりを挟む
夜会を終えて部屋に戻る際もエラルドがぴったりと私に張り付くように寄り添っております。 

「ジュリア、疲れただろう?今晩はもう仕事しないで早く休もう。」 


「エラルド待って!!」 

「ロレッタ、私のことを皆の前では陛下と呼ぶように。」 

「そんな…今までそんなこと一言も言わなかったのにっ…王妃陛下…エラルドに何をしたのですか??!!エラルドを返してくださいっ!!」 

大きな瞳から涙がぽろぽろとながれてと流れて庇護欲をそそっております。エラルドもロレッタ様を慰めるために、ここで私とお別れするだろうと静かに成り行きを見守っておりました。 

 

「陛下、だ、ロレッタ。なぜそのような簡単なことも出来ない?」 

「ひどいっ!やっぱり王妃陛下がっ…」 

「ジュリアは関係ない。むしろジュリアが無理してでも仕事をしているからこそ君は毎日好きなことばかりしていられるんだ。感謝しても非難するいわれはないはずだが?ジュリア…すまない…側妃を勘違いさせてしまったようだ。」 

「陛下、私はここまでで結構ですので」 

「いや、君を部屋まで送り届けるよ。さあ行こう。」 

呆然とエラルドを見つめるロレッタ様を置いて、エラルドは私を部屋まで連れて行くのでした。 

 

ーーーーーーーー 

 

「王妃陛下おはようございます…またこちらで執務をなさっておられたのですか?」 

「ええ、眠れなくて…もう朝になってしまったのね…」 

「お休みになられてないのでは?」 

「仕方ないわよね。こうでもしないと政が溜まって困るのは国民なのだもの。申し訳ないのだけれど水を一杯頂けるかしら。」

「 もちろんでございますとも王妃陛下。さあどうぞ。」

「ありがとう。…ぐっ…」

「王妃陛下!!」 

「ぐっ……」 

体中の力が抜けて行きます。 

口から流れ出る血がやりかけの書類を汚していきます。出来上がった書類はすべて付け足したサイドテーブルの上に…まだ手付かずの書類は反対側のサイドテーブルの上に…良かった…そう思った時には目の前がぷつんと真っ黒に塗り替えられておりました。 

 

◇◇ 

 毒に倒れて十日目で目が醒めた私は左足の感覚がなくなっておりました。 

用意されていた飲み水から毒がみつかり、私に使えてくれていたジョルジョの娘ローラとエミリアが連行されたと聞いて、すぐに彼女らを解放するように働きかけねばなりませんでした。 

「脇の甘いあなたたちがいるとまたすぐに私の命が狙われてしまうのよ。早く元の場所にお戻りなさい。」 

私がわざと冷たく彼女らを突き放すことで、今度こそお守りいたしますのでずっと使えさせてくださいと乞う二人をこの王宮から逃がすことにしました。 

おそらく私の近くに使えているとまた今回のような事が起きて、次こそは巻き込まれただけの彼女たちを庇うのが難しくなるでしょう。 

彼女たちは私のような者のために不幸になるのではなく、ジョルジョの近くで優しい家族と幸せに過ごせばいいのです。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

私が妻です!

ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。 王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。 侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。 そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。 世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。 5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。 ★★★なろう様では最後に閑話をいれています。 脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。 他のサイトにも投稿しています。

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

処理中です...