出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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「王妃様、とても綺麗ですわ!!」 

「王妃様、本当に…なんて美しいのかしらっ…」 

鏡の中には着飾った私が映っております。 

ドレスはエラルドが先日贈ってくれたものを身に着けております。贈ってくれなければ正直着て行けるドレスがありませんでしたので本当に助かりました。 

「準備はいいかい、ジュリア。行こうか?」 

「はい陛下」 

 

夜会に参加するのは本当に久しぶりのことです。大方悪意の含まれた噂話でもちきりのところに飛び込むなど、本当は憂鬱でしかないので、心が躍るようなことはないのですが。 

エラルドが私をエスコートしてくれたので今日は私の役目はこれで終わったとばかりにエラルドと距離を置こうと身を引こうとしました。

「さあ、行こうか。」

「恐れ入りますが、どちらへ…?」

「ジュリア、ファーストダンスを踊らなければ皆が躍ることが出来ないじゃないか。」

「しかしロレッタ様が…」

「君は正妃で彼女は側妃だ。何も心配することはない。」

向かい合う間も私の腰に手を回すエラルドから距離を置くことは難しく、流れてきた音楽に合わせて自然と体が動いてしまいます。
長年慣れ親しんだエラルドとのダンスは息がぴったりですが、もう以前のように心が躍ることはないのです。


私たちがファーストダンスを踊ると、周囲にいるものたちは一堂に驚愕の面持ちでエラルドと私それからロレッタ様に視線を向けておりました。 

ロレッタ様は笑顔を見せておりましたが私に向ける瞳はまった笑っておりません。 

私とファーストダンスを披露したエラルドはロレッタ様と踊らずに、ずっと私の腰に腕を回してぴったりと寄り添って参加者の挨拶を受けております。 

ロレッタ様は…私たちの後ろに控えて笑顔を浮かべております。 

ことあるごとに私に視線を向けて来るエラルドの瞳が熱をはらんでいるように見えるのは気のせいでしょうか。 

 

次々にあいさつに訪れる招待客の腹の内を探るような視線を受け続けるのは私にとっては慣れたものですが、ロレッタ様にとっては大層屈辱だろうとエラルドの隣で招待客へ相槌を打ちながら思うのでした。 

 

「エラルド陛下、今日はいかがしたのですか?」 

「今日はどうしたとは?どういう意味だ、宰相」 

「陛下は常に娘…いえロレッタ様とそれはそれは仲睦まじいご様子。それなのに今日はめずらしく王妃様に寄り添われて一体どうしたのかと皆不思議がっておるようですが…」 

「何を…王妃を蔑ろにするわけがないだろう?ジュリアも私にとってはかけがえのない大切な妻なのだから大切にするのはあたりまえであろう?」 

宰相とエラルドの会話を周囲の者たちが聞き耳を立てていたので、エラルドが私のことを大切でかけがえのない妻と堂々と宣言したことに周囲がざわめき立っておりました。 
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