上 下
46 / 100

45

しおりを挟む
すみません、予約日時を間違えており公開されていませんでした。
45話です。少し前の話にさかのぼっています。よろしければご覧ください。

--------------------------------


まだ静養するようにとお兄様にも王宮医に言われておりますがそうもいきませんので、ローラとエミリアに頼んで、私室に執務室の書類を移動してもらいました。 



「ジュリア、君がこうするだろうと思っていたよ。」 

深夜ローラとエミリアを休ませた後も一人黙々と寝台の上で執務を行っているとエラルドが現れました。 

何も言わずに寝台に乗り上げてきたエラルドが私の隣に胡坐をかいて座り込んでおります。 

「手伝うよ」 

「陛下、お心だけで結構ですので。どうぞロレッタ様の元へお戻りください。」 

かすれ声で何とか声を絞り出してそれだけ言うと再びすまない、とエラルドが謝ってきます。 

「もう何も言わなくていいから。」 

そう告げたエラルドは無言で書類を次々にさばいていきます。 

「…こうして寝台に二人並ぶのも、君の部屋で時間を過ごすのも、…並んで書類を裁くのも……」 

本当に久しぶりだ、といった時にはエラルドの声が震えておりましたが、私は書類から目を離すことはありませんでした。 

ずっと横になって眠っていたせいか眠気も訪れない私は、気が付けば朝になってもまだ書類を裁いており、それは隣にいるエラルドも同じことでした。 

 

朝の支度をしにやってきたローラとエミリアはエラルドがいることに驚いておりましたが、すぐに表情をたてなおし、仕事に取り掛かってくれました。 

さすがはジョルジョの娘たちです。

「朝食をここで一緒に食べようジュリア。君たち、ここに私たちの朝食を運んでくれ。」 

エラルドの一声でどんどん豪華な朝食が運ばれてきます。 

食事を持ってきた侍女らはエラルドが私の部屋にいるのを目にして大層驚いているようで、エラルドはそんな彼らを見て私に再びすまないと謝っておりました。 

「そうか、ジュリアは病み上がりだもんな。果物の方が食べやすいか…」 

小さく切って私の口に果物を持ってくるエラルドにされるがままになっていると廊下が騒がしくなりました。 

「お待ちくださいロレッタ様!」 

「エラルド!!」 

「ロレッタ何をしている。ここは王妃の部屋だ。お前が勝手に入ってきていい場所ではない。」 

「でもっ…なんでっ…エラルドが王妃様と一緒に!!!」 

「衛兵、側妃を連れて行くんだ。部屋に閉じ込めておけ。」 

「しかし陛下、ロレッタ様がお可哀そうでは…?」 

「なんだと?」 

「いえ、失礼いたしました、さあ、ロレッタ様こちらへ…」 

嵐のようにやってきて嵐のように去っていったロレッタ様がいなくなってからエラルドが大きなため息を吐いておりますが私は何といっていいのかわからないのです。 

「すまなかったジュリア」 

いつも誤ってばかりですね…という気さくな会話を思わず飲み込みました。
思いあがってはいけない、エラルドの気持ちはロレッタ様にあるのですから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

離縁を言い渡したら、追いかけられる羽目になりました

ネコ
恋愛
 公爵家に嫁いだミレイユは、激務の夫が“仕事”という口実で愛人のもとへ通う姿に気づかないふりをしてきた。けれどある日、開き直った夫は「家名のために耐えろ」と言い放つ。もはや我慢の限界に達したミレイユは離縁を宣言。すると何故か、あれだけ放置していた夫が必死にミレイユを引き止めようと動き出す。もう遅いのに――。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ
恋愛
この話は 『内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜』 の続編です。 アイシャが亡くなった後、リサはルビラ王国の公爵の息子であるハイド・レオンバルドと結婚した。 そして、アイシャを産んだ。 父であるカイザも、リサとハイドも、アイシャが前世のそのままの姿で転生して、自分たちの娘として生まれてきたことを知っていた。 ただアイシャには昔の記憶がない。 だからそのことは触れず、新しいアイシャとして慈しみ愛情を与えて育ててきた。 アイシャが家族に似ていない、自分は一体誰の子供なのだろうと悩んでいることも知らない。 親戚にあたる王子や妹に、意地悪を言われていることも両親は気が付いていない。 アイシャの心は、少しずつ壊れていくことに…… 明るく振る舞っているとは知らずに可愛いアイシャを心から愛している両親と祖父。 アイシャを助け出して心を救ってくれるのは誰? ◆ ◆ ◆ 今回もまた辛く悲しい話しが出てきます。 無理!またなんで! と思われるかもしれませんが、アイシャは必ず幸せになります。 もし読んでもいいなと思う方のみ、読んで頂けたら嬉しいです。 多分かなりイライラします。 すみません、よろしくお願いします ★内緒で死ぬことにした の最終話 キリアン君15歳から14歳 アイシャ11歳から10歳 に変更しました。 申し訳ありません。

処理中です...