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以前はこの抱擁が嬉しかったはずですのに今ではうすら寒く感じ、なぜ私に抱擁する必要があるのかと疑問しか思い浮かんできません。 

以前は喜んで腕をエラルドにまわしていた私が微動だにしないもので、エラルドも多少動揺しているようです。ハッとして私を一層強く私を抱きしめてきました。 

すまない、すまないと繰り返しながら。 

 

「陛下、王妃陛下は病人ですぞ。その腕を放しなされ。」 

王宮医師が薬を抱えて戻って来て陛下をいさめてくれました。 

 

「とにかく今は王妃陛下のお召し物と寝具を変えて差し上げなくては再び体調を崩してしまわれる。それと陛下、王妃陛下の環境の改善を進言させて頂きます。疲労のため体が悲鳴を上げておられる。出来ないのであれば兄上であれれるリベラート小公爵殿に静養の間だけでもお預けなさいませ。」 

 

「駄目だ…ジュリアはここで私と共にいるのだ。…すまない。すまなかったジュリアっ」 

エラルドと王宮医が私の静養先のことで口論を広げる声が遠くに聞こえてきて気が付けば再び意識を失っておりました。 

 

目が醒めると見たこともない侍女が部屋の側に控えておりました。 

「おはようございますジュリア王妃陛下。 

新しく王妃陛下付き侍女となりましたリベラート公爵家筆頭執事ジョルジョの娘ローラとエミリアでございます。これからどうぞ宜しお願いいたします。」 

二人は甲斐甲斐しく私を着替えさせ寝台の寝具を新しいものに変えてくれました。 

「王妃陛下、お水と一緒にお薬をお飲みください。何か召し上がった方がよろしいでしょう。リンゴをすりおろしたのがございますがいかがでしょう。私の父がよく昔私たちに病気の時に作ってくれた唯一の食べ物なのですがとても食べやすいんですよ?」 

こくんと首を縦に振った私に、ひんやりとしたリンゴのすりおろしを手渡してくれました。 

爽やかな香りと味のおかげで何とか半分食べることが出来ました。 

「小公爵様は執務室でお仕事をなさっておいでです。リンゴを半分召し上がったことをお知らせしたらさぞかし喜ばれることでしょう。」 

 

頭の痛みが徐々に引き、三日目にしてようやく起き上がることが出来るようになりました。 

「お兄様、ずっと付き添って下さいまして本当にありがとうございました。」 

「ジュリア…もういいだろ?かえって来いよ。私が早く父上から公爵の地位を継ぐからもう無理をしなくていいんだ。」 

「ありがとうお兄様。…でも私が帰るとなるとお兄様に迷惑をかけてしまうだけですので…」 

かすれた声しか出ませんが、何とかお兄様にお伝えすることが出来ました。

私は幸せになるべきではないのです。何せ出来損ない王妃なのですから。
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