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「ジュリア、いったい何があったんだ?

領地に出る直前にカスト殿下からジュリアの様子がおかしいと急な知らせが届いて急いでジュリアの執務室に向かったんだ。そしたら執務室の隣の休憩室のドアが開いていて、寝台はびっしょりと濡れて乱れているし、すれ違う者たちはお前が幽鬼のように一人惨めに歩いていたなんてあざ笑っていた。

あいつらの顔は全員覚えたから俺が公爵になった暁には一斉に痛い目見せてやるがな。 

王妃の部屋には王妃の兄とは言え、許可なく足を踏み入れることが出来ないし、カスト殿下でも許可を出す権利はないから、仕方なしに陛下に許可をもらいに行ったんだ。

そこでやっと…あいつは顔色を変えていたよ。とにかくお前の部屋にようやく足を踏み入れたらお前が使い古したようなシーツに蒼白で震えて包まっていたんだ。よく見たら浴槽の水は血で赤く染まって血液が床を汚しているし、お前の顔は血だらけで…侍女を呼びつけてお前を着替えさせてシーツを交換させて医者が飛んできて…それからお前が目覚めなかったらどうしようかと思った…もう無茶はやめてくれっ…」 

私の手を握り締めるお兄様の肩が震えております。 

お兄様を泣かせてしまったのだとさすがに動揺してしまいます。

どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。

しばらく起きていたからでしょうか。どうしても頭がふらふらして、いつの間にか意識を失ってしまった私が再び目を醒ましたとき、お兄様がまだ私の側にいてくださいました。 

疲れていらっしゃるのでしょう、寝台に突っ伏すように眠り込んでいます。 

寒くないだろうかと、新しく替えられたシーツをお兄様にかけてあげます。 

「ジュリア…目が醒めたのか…」 

扉からエラルドが入ってきました。 

「…すまなかったジュリア…君をこんなひどい状況に追い込んでいたとは…そんなつもりはなかったんだ…」 

会うたびに謝ってくるエラルドにもう何も感じることがなくなったのは本当に一体いつからだったのでしょう。 

「唇まで…君の美しい唇が…こんな…すまない…」 

再びあやまってくるエラルドに私は何も言う言葉が思いつきません。 

こんなことで喉と唇の痛みがあって声が出しづらくなっていて良かったと思うことができました。 

 

何度も目覚めては意識をすぐに失っておりましたので時間の感覚がおかしくなってしまいました。
体調を崩してしまってどのくらいの時間がたったのでしょうか。

お兄様も席を外しており、私一人だけが部屋におります。

目覚めると、汗でぐっしょり濡れてしまった寝衣も髪の毛もべったりと全身に張り付いております。

そのままにしていると更なる悪寒が襲ってきました。誰かが私の世話をしてくれることもないのだろうと、もう侍女を呼び気にもなれませんので、自分でどうにかしなければとふらふらと起き上がります。 

「何をしているんだジュリア、寝ていなければ」 

急に部屋に入ってきたエラルドに働かない頭でどう対応したら良いか迷いながらふらついていると、エラルドがすまないと私を抱きしめてきました。 
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