出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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「ジュリアすまなかった…今度君にもドレスを贈らせてくれ…いや、私が今まで君に贈ったドレスはどうした?」 

「…わかりません」 

「わからない…とは?」 

「そのままの意味ではありませんか、兄上?ねえロレッタさん?」 

「…なんのことかしらカスト殿下?」 

「何の話だカスト…?」 

 

「お時間でございます。」 
タイミングよく顔見せの時間になりました。 

エラルドが私の手を取って一緒に並んで出て行きます。 

ロレッタ様はエラルドの斜め後方に、カスト殿下は私の隣に並んでくださっております。 

「王妃陛下!王妃陛下ーーー!!!」 

「国民は本当に君を慕っているな。ジュリア、国民の皆は君の努力のおかげで豊かな生活が出来ているのだと感謝しているんだ。良かったな、頑張りが報われたじゃないか。さすがだよジュリア。」 

隣で饒舌に話しかけてくるエラルドは私に肩を寄せており、居心地を悪く感じます。それもその筈、私の反対側でロレッタ様は可愛いかんばせをゆがめて私をにらみつけておりますので。 

「なんだ、陛下は側妃を迎えたっていうから心配してたが王妃様と仲良さそうじゃないか!!王妃陛下がいなくなったって聞いてたけど元気そうで良かった良かった!!!」 

国民からはそんな声が聞こえてきますが、エラルドは王妃である私との仲の良さを国民にアピールしたかっただけでしょう。 

 

無事に顔見せが終わりました。 

「ジュリア、昼食を一緒に「エラルドそれなら私も一緒にしていいかしら。折角だから私も王妃様とご一緒したいわ。」」 

「…申し訳ございませんが、もう少しで家族が会いに来る予定になっております。準備もありますのでご辞退させて頂きます。」 

「…ああ、そうだったな。残念だ。ではせめて夕餉でも…」 

「まあ残念!ねえ、エラルド、それじゃあ今から二人きりでいつものように食事をしましょうよ。」 

「…すまないがロレッタ。私も急用を思い出した。君はゆっくり昼食を食べてくれ。」 

 

エラルドに気が付かれないよう私をにらみつけるロレッタ様とまだ何か言いたげなエラルドを置いて、着替えのために一度自室へ戻ります。 

 

このドレスを一人で脱ぐのは無理なので侍女を鈴で鳴らして呼びますが誰も現れません。 

時間に近づいてきましたので、仕方ありませんがこの格好のまま応接室に向かいます。 

 

こんな格好で侍女も護衛もつかずに王宮内を一人で歩いていますが、すれ違う者たちは私に敬意を表すこともせず通り過ぎます。 

透明人間というものがいるのだとしたら間違いなくそれは私のことを指しているのでしょう。
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