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どうせ、王宮主催の舞踏会や茶会、夜会など華やかに着飾る必要のあるものはエラルドがロレッタ様と参加しますので、仕事上交渉が必要であれば王宮に相手に来てもらうことにしています。
そうすれば私が外出する際についてくることになる護衛のことなど頭を悩ませる必要もなくなるのですから。
王妃の護衛が嫌々ついてくるといった体を相手の方にお見せするのは非常に恥ずかしく、またそんな恥ずべきことを相手に見せてしまうなど失礼になりますので、そのような事態は避けておきたいのです。
朝以来、再び侍女に夕飯を持ってきてもらいます。
城に戻って以来ずっと同じものを頂いておりますので、驚きも感動もありません。
コンコンッ
「ジュリア入るよ?すまない食事中だったか。…なんだそれは?なぜ君がそんなものを食べている?侍女は?君だけしかここにいないのか?」
「申し訳ございません、陛下。」
「いや、君に怒っているわけではない。…おい、すぐにジュリアに夕飯を届けるように手配しろ。--それと、侍女頭と料理長に執務室まであとで来るように伝えるんだ。」
「畏まりました。」
「いつからそんな食べ物を食べていたジュリア?」
「覚えておりません陛下」
「…すまなかったジュリア…これからは一緒に食事をしよう」
「いえ、そんなことをして頂かなくとも陛下はロレッタ様と召し上がってください。」
「私が君と一緒に食事をと言っている」
「…では、私と陛下の時間があいます時にお願いいたします」
「約束しよう」
「失礼いたします、陛下。王妃陛下のお食事をお持ちいたしました。」
侍女が恐る恐るといった体で、湯気の昇る食事を持ってきました。
「明日の午前中に、君の帰還を国民に知らせる顔見せをする。それから午後に君の家族が会いに来ることになっている。二時に応接室で会うことになるから予定を開けておいてくれ。一週間後は王家主催の夜会だ。その時、君をエスコートさせてくれ。」
「…了解いたしましたいたしました陛下。」
「…ああ、ではお休みジュリア。」
エラルドを見送り寝台を横目に眺めます。
いつまでたってもベッドメイクのされない寝台のシーツはいつから同じものを使っているのかなどもう覚えてもおりません。
疲れているはずなのに目がさえてしまったものですので、執務室に戻りました。
相変わらず本来いるはずの側近も護衛もおらず一人で黙々と執務を進めて行きます。
執務を進めるうちにいつの間にか力尽きるように眠りに落ちていたようで、気が付けば執務机に突っ伏すようにして目が醒めました。
雑に扱われていても貴族に産まれましたので一人では入浴も難しいのですが、もう侍女を呼ばなくても備え付けのものを何とか駆使して一人で体を洗いました。
大判の使い古しのタオルが愉快堕ちたままになっているのを拾い上げ体を拭いて髪の毛を梳きます。
振り返ると床もびちゃびちゃで浴槽の周りもひどい有様ですがとりあえず今はこれで良しとしましょう。
そうすれば私が外出する際についてくることになる護衛のことなど頭を悩ませる必要もなくなるのですから。
王妃の護衛が嫌々ついてくるといった体を相手の方にお見せするのは非常に恥ずかしく、またそんな恥ずべきことを相手に見せてしまうなど失礼になりますので、そのような事態は避けておきたいのです。
朝以来、再び侍女に夕飯を持ってきてもらいます。
城に戻って以来ずっと同じものを頂いておりますので、驚きも感動もありません。
コンコンッ
「ジュリア入るよ?すまない食事中だったか。…なんだそれは?なぜ君がそんなものを食べている?侍女は?君だけしかここにいないのか?」
「申し訳ございません、陛下。」
「いや、君に怒っているわけではない。…おい、すぐにジュリアに夕飯を届けるように手配しろ。--それと、侍女頭と料理長に執務室まであとで来るように伝えるんだ。」
「畏まりました。」
「いつからそんな食べ物を食べていたジュリア?」
「覚えておりません陛下」
「…すまなかったジュリア…これからは一緒に食事をしよう」
「いえ、そんなことをして頂かなくとも陛下はロレッタ様と召し上がってください。」
「私が君と一緒に食事をと言っている」
「…では、私と陛下の時間があいます時にお願いいたします」
「約束しよう」
「失礼いたします、陛下。王妃陛下のお食事をお持ちいたしました。」
侍女が恐る恐るといった体で、湯気の昇る食事を持ってきました。
「明日の午前中に、君の帰還を国民に知らせる顔見せをする。それから午後に君の家族が会いに来ることになっている。二時に応接室で会うことになるから予定を開けておいてくれ。一週間後は王家主催の夜会だ。その時、君をエスコートさせてくれ。」
「…了解いたしましたいたしました陛下。」
「…ああ、ではお休みジュリア。」
エラルドを見送り寝台を横目に眺めます。
いつまでたってもベッドメイクのされない寝台のシーツはいつから同じものを使っているのかなどもう覚えてもおりません。
疲れているはずなのに目がさえてしまったものですので、執務室に戻りました。
相変わらず本来いるはずの側近も護衛もおらず一人で黙々と執務を進めて行きます。
執務を進めるうちにいつの間にか力尽きるように眠りに落ちていたようで、気が付けば執務机に突っ伏すようにして目が醒めました。
雑に扱われていても貴族に産まれましたので一人では入浴も難しいのですが、もう侍女を呼ばなくても備え付けのものを何とか駆使して一人で体を洗いました。
大判の使い古しのタオルが愉快堕ちたままになっているのを拾い上げ体を拭いて髪の毛を梳きます。
振り返ると床もびちゃびちゃで浴槽の周りもひどい有様ですがとりあえず今はこれで良しとしましょう。
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