出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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「…ジュリア…騒がしくなってしまってすまなかった。」 

「いえ、陛下。陛下がここにいてはロレッタ様も心配されているご様子ですのでそろそろロレッタ様の元へ行かれてはいかがでしょう。」 

「…なぜこんな時にロレッタを心配する。…すまない、ああ、また誤ってしまったな。すまない。…ああ、何をやっても君にどうしても誤ってしまうようだ。…邪魔をしたな。そろそろ君も休んだ方がいいだろう。」 

「…私は昨日からの続きの執務に取り掛かります。…下町の下水環境の整備についてでしたので、中途半端に仕事を放りだしたようで気になっておりましたの。今、最終段階でこの決済が片付きましたら工事に入るだけでなのです…この整備が進んで人々が住みやすくなれば、もっとほかの場所でも同じようなことをしようという動きになるのではないかと願っております。」 

「しかし今日くらい体を休めても…」 

「私のことは気にかけて下さらずとも大丈夫ですので。」 

「…君は自分のことをわたくしではなく、私(わたし)と呼ぶようになったのだな。」 

「失礼いたしました。」 

「いや、別に機嫌を悪くしたわけではない。」 

「作用でございますか。」

「ああ…では…邪魔したな。また後で会いに来る。」 

扉から出て行ったエラルドを一瞥する気も起らない私は私室の机の上に置かれた書類に手を付けて行きました。 

◇◇ 

「ふぅっ…」 

ようやく城に戻って来てから私室に置いてあった書類に目を通し終わりました。 

相変わらずこちらから手配を頼まなければ水の一杯どころか食事も用意されません。 

 

チリンチリンッ 

「いかがされましたか王妃陛下」 

「少し遅くなってしまったけれども何か食べるものをお願いできるかしら。飲み物もお願い。」 

「…畏まりました…」 

嫌々といった態度で出て行った侍女達に相変わらずだと自嘲しますが、そんな彼らも私がこの城に王妃としてきたころは私を丁重に扱ってくれておりました。 

一体いつから私は何を間違えていたのでしょう… 

 

戻ってきた侍女はワゴンの上の食事と飲み物をテーブルに並べると控えることもなく部屋を後にします。 

 

皿の上には冷めた具なしのスープと、カビの生えたパンが置かれております。 

飲み物の水は…小さな虫の死骸が何匹か浮かんでおりますので、虫の死骸がコップに入らないように自分で注いでのどを潤します。 

驚くこともありません。ただいつもの日常に戻っただけ。 

セーレと過ごしたたった一日で夢のような思いをさせて頂けただけですので。 

――そう、ただいつもの日常に戻っただけなのです。 
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