33 / 100
32
しおりを挟む
「…いらぬ苦労ばかり君には欠けてしまうな…」
「陛下、とんでもないお言葉でございます…」
髪の毛を梳きながらエラルドが話かけてきます。
「君を犠牲にする決断をしてしまったこと、深く後悔している。謝罪させてくれ。すまなかったジュリア。」
手を止めて鏡越しに私をじっと見つめたエラルドがその場で頭を下げてきました。
「陛下、おやめください。皆が見ております。私は何とも思っておりませんので。」
「何とも思ってない…か。そうか…」
髪の毛を梳き終わったエラルドと再び向かい合わせのソファに座ると、侍女が温かなお茶をさしだしてきます。この王宮で暖かなお茶を頂くのは一体いつぶりのことでしょうか。
「失礼いたします、王妃陛下。側妃ロレッタ様が是非ともお目にかかりたいとお越しになっております。」
「王妃陛下!よく無事にお戻りくださいました!」
「おい、ロレッタ、ジュリアが許可もしていないのに部屋に押し入ってくるとは無礼だぞ。衛兵、そこで何をしていた?」
「エラルド…ごめんなさい、そんなに怒らないで?衛兵たちも私がどうしても王妃様にお目通りを願いたいと無茶を言ってしまったから…私が、私が…側妃の私が犠牲になるべきだったのにっ…王妃様に代わりに犠牲になってもらったのだものっ…心苦しかったの。だから無事に戻って来てもらえて本当にうれしくって…攫った男に王妃様が傷物にされていようとっ、私もエラルドも王妃様を快く王宮にお迎えいたしますわ。ねえっ、エラルドッ?」
「…ロレッタ、もういい、やめてくれ。君は自分の部屋に戻っていなさい。」
「でも、エラルド…折角王妃様がお戻りになられたのに…エラルドだけ王妃様とゆっくりするだなんてずるいわ…それに王妃様がお戻りになられたからエラルドには私はもう必要ないのよね?ううっ…お父様…いえ、宰相に相談して私に見合った方に臣籍降下させてもらった方が良いのかしら…」
「そんなロレッタ側妃様!!そんな卑屈になってはいけませんわ!!国王陛下の寵愛はロレッタ様だけのもの。王宮中の者たちが存じております。さあ、行きましょう。わたくし共がお部屋までお供いたしますので…」
ロレッタを心配する衛兵や侍女らに支えられてぞろぞろと部屋を出て行く様子はとても滑稽で、その様子を他人事のように見送りました。
「騒がしくなってしまってすまなかった。」
「何度も私ごときにそう謝らないでくださいませ陛下。私は大丈夫ですのでお気遣いなく。」」
「いや、しかし…君はいつからそんな他人行儀になったんだろうな。いや、そうさせてしまったのは私のせいか。」
今更…今更そのようなことを言うエラルドを目の前にもう何も心が動かされることはありませんでした。
「陛下、とんでもないお言葉でございます…」
髪の毛を梳きながらエラルドが話かけてきます。
「君を犠牲にする決断をしてしまったこと、深く後悔している。謝罪させてくれ。すまなかったジュリア。」
手を止めて鏡越しに私をじっと見つめたエラルドがその場で頭を下げてきました。
「陛下、おやめください。皆が見ております。私は何とも思っておりませんので。」
「何とも思ってない…か。そうか…」
髪の毛を梳き終わったエラルドと再び向かい合わせのソファに座ると、侍女が温かなお茶をさしだしてきます。この王宮で暖かなお茶を頂くのは一体いつぶりのことでしょうか。
「失礼いたします、王妃陛下。側妃ロレッタ様が是非ともお目にかかりたいとお越しになっております。」
「王妃陛下!よく無事にお戻りくださいました!」
「おい、ロレッタ、ジュリアが許可もしていないのに部屋に押し入ってくるとは無礼だぞ。衛兵、そこで何をしていた?」
「エラルド…ごめんなさい、そんなに怒らないで?衛兵たちも私がどうしても王妃様にお目通りを願いたいと無茶を言ってしまったから…私が、私が…側妃の私が犠牲になるべきだったのにっ…王妃様に代わりに犠牲になってもらったのだものっ…心苦しかったの。だから無事に戻って来てもらえて本当にうれしくって…攫った男に王妃様が傷物にされていようとっ、私もエラルドも王妃様を快く王宮にお迎えいたしますわ。ねえっ、エラルドッ?」
「…ロレッタ、もういい、やめてくれ。君は自分の部屋に戻っていなさい。」
「でも、エラルド…折角王妃様がお戻りになられたのに…エラルドだけ王妃様とゆっくりするだなんてずるいわ…それに王妃様がお戻りになられたからエラルドには私はもう必要ないのよね?ううっ…お父様…いえ、宰相に相談して私に見合った方に臣籍降下させてもらった方が良いのかしら…」
「そんなロレッタ側妃様!!そんな卑屈になってはいけませんわ!!国王陛下の寵愛はロレッタ様だけのもの。王宮中の者たちが存じております。さあ、行きましょう。わたくし共がお部屋までお供いたしますので…」
ロレッタを心配する衛兵や侍女らに支えられてぞろぞろと部屋を出て行く様子はとても滑稽で、その様子を他人事のように見送りました。
「騒がしくなってしまってすまなかった。」
「何度も私ごときにそう謝らないでくださいませ陛下。私は大丈夫ですのでお気遣いなく。」」
「いや、しかし…君はいつからそんな他人行儀になったんだろうな。いや、そうさせてしまったのは私のせいか。」
今更…今更そのようなことを言うエラルドを目の前にもう何も心が動かされることはありませんでした。
131
お気に入りに追加
298
あなたにおすすめの小説

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◆エールありがとうございます!
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆なろうにも載せ始めました
◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
恋愛
養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!大勢の男性から求婚されましたが誰を選べば正解なのかわかりません!〜
タイトルちょっと変更しました。
政略結婚の夫との冷えきった関係。義母は私が気に入らないらしく、しきりに夫に私と別れて再婚するようほのめかしてくる。
それを否定もしない夫。伯爵夫人の地位を狙って夫をあからさまに誘惑するメイドたち。私の心は限界だった。
なんとか自立するために仕事を始めようとするけれど、夫は自分の仕事につながる社交以外を認めてくれない。
そんな時に出会った画材工房で、私は絵を描く喜びに目覚めた。
そして気付いたのだ。今貴族女性でもつくことの出来る数少ない仕事のひとつである、魔法絵師としての力が私にあることに。
このまま絵を描き続けて、いざという時の為に自立しよう!
そう思っていた矢先、高価な魔石の粉末入りの絵の具を夫に捨てられてしまう。
絶望した私は、初めて夫に反抗した。
私の態度に驚いた夫だったけれど、私が絵を描く姿を見てから、なんだか夫の様子が変わってきて……?
そして新たに私の前に現れた5人の男性。
宮廷に出入りする化粧師。
新進気鋭の若手魔法絵師。
王弟の子息の魔塔の賢者。
工房長の孫の絵の具職人。
引退した元第一騎士団長。
何故か彼らに口説かれだした私。
このまま自立?再構築?
どちらにしても私、一人でも生きていけるように変わりたい!
コメントの人気投票で、どのヒーローと結ばれるかが変わるかも?

助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした
Karamimi
恋愛
15歳のフローラは、ドミスティナ王国で平和に暮らしていた。そんなフローラは元公爵令嬢。
約9年半前、フェザー公爵に嵌められ国家反逆罪で家族ともども捕まったフローラ。
必死に無実を訴えるフローラの父親だったが、国王はフローラの父親の言葉を一切聞き入れず、両親と兄を処刑。フローラと2歳年上の姉は、国外追放になった。身一つで放り出された幼い姉妹。特に体の弱かった姉は、寒さと飢えに耐えられず命を落とす。
そんな中1人生き残ったフローラは、運よく近くに住む女性の助けを受け、何とか平民として生活していた。
そんなある日、大けがを負った青年を森の中で見つけたフローラ。家に連れて帰りすぐに医者に診せたおかげで、青年は一命を取り留めたのだが…
「どうして俺を助けた!俺はあの場で死にたかったのに!」
そうフローラを怒鳴りつける青年。そんな青年にフローラは
「あなた様がどんな辛い目に合ったのかは分かりません。でも、せっかく助かったこの命、無駄にしてはいけません!」
そう伝え、大けがをしている青年を献身的に看護するのだった。一緒に生活する中で、いつしか2人の間に、恋心が芽生え始めるのだが…
甘く切ない異世界ラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる