出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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ばんっ!

血相を変えたエラルドが私の部屋へ飛び込んできました。

「ジュリア!おい!何をしているんだ!誰の許可を取ってっ「陛下、もしも王妃陛下が陛下以外の男と交わっているとすれば大問題ですぞ?それに、子でもなしていればどうするのです?」」 

「それはっ…しかしっ、女医がいたであろう?!」 

「陛下恐れながら、私は医者でございます。女性でも男性でも患者は皆同じ。そのような偏見を持たれるとは心外ですぞ。」 

「しかし…なぜ宰相が同席しているのだ?!」

「恐れながら陛下。私は隣室で待たせて頂きましたので、診察中の王妃陛下を目にしておりません。ご安心下さい。」

宥めるようにそうエラルドに告げるも、エラルドは未だに苛立ちをあらわにしております。 

「とにかく、落ち着きなされ陛下。
見たところ、いかがわしいことをされた痕跡は残されておりませんでした。陛下は王妃陛下と閨を共にしばらくしておられなかったのですよね。処女膜こそなくしておりますが、昨日今日、男女の交わりがあった形跡は見受けられませんでした。怪我をしているわけでもございませんのでご安心下され。

では、私はこれにて失礼させて頂きます。」 

「王妃陛下、ご協力ありがとうございました。いやあ、良かった。これで王妃陛下の身の潔白が証明された。…とはいえ、雲隠れされていた一日、私たちの目の届かないところで何をされていたかなど確かに証明されるのは難しいことですが。」 

「何をいう宰相。もう充分だろうさがれ。」 

「失礼いたしました。陛下も王妃陛下が戻って来て喜んでおらる気持ちもわかりますが、娘…いえ、失礼いたしました。ロレッタ側妃様のこともお忘れなきよう。では失礼させていただきます。」 



「すまなかったジュリア」 

「いえ、陛下。攫われたのですから当然のことでしょう。ましてやこのような身分なのですから。」 

「…疲れただろう?ゆっくり湯につかってくると言い。ーーまた来る。」 

「恐れ入ります、陛下。」 

 

眉尻を下げて不安げな表情をわずかにさらしたエラルドを背にして呼び鈴を鳴らし浴室へ続く扉に向かいます。 

しばらく待っておりますと、明らかに気乗りのしない空気を隠そうともしない侍女たちが私の世話をしにやってきました。 

「王妃陛下、入浴をお手伝いさせて頂きます。しかしもう少し早めに知らせて頂かなくてはわたくし共も困ります。色々と他にも忙しいので。さあ、こちらへ。」 

「ええ、お願いね。」 

明らかにやる気のない侍女数名に囲まれて服を脱がされて行きます。 

「王妃陛下が先日と同じ服を着ていらっしゃるだなんて。なんてお気の毒なのでしょう…。ふふっ」 

一糸まとわぬ姿で浴槽に浸かります。 

おざなりに全身を洗っている侍女質が次第に不満顔になってくるのが目に入ってきました。 

「あんな怪物に攫われただなんて…本当に汚らわしいっ…」 

 

そういうとその侍女が唐突にその場を去っていきました。 

他の二名の者たちもそのあとすぐ後を追うように出て行ってしまいました。 

 

頭から泡だらけの状態で放置されてしまいました。 

体がブルりと震えます。 

「このように大量の氷水を湯船に貼るのは大変だってでしょうにね…」 

 

浴槽の水が凍えるほど寒いのは抜きにしても、考えてみればこのように浴槽に一人ゆったりと浸かれるとは思っておりませんでした。
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