出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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体が沈むにつれて、海中の景色が綺麗だからもっと眺めていたいのか、それとも命乞いをした方がいいのか、このまま穏やかに私の時間が終わるのを待った方がいいのか、私にはよくわからないのです。 

息苦しさは限界を迎え視界がかすんできました。 

最後に夢のような幸せな時間を与えてくれたセーレを思い出しながら瞼を閉じました。 


「…目が醒めたか。」 

「セーレ…セーレがそうしたかったのなら殺して下さってよかったのですよ?ごほっ」 

「…お前…」 

いつの間にかずぶ濡れのはずの体は乾いていて、それなのに私の体は海面に横たわっております。 

太陽の光が眩しくて少しだけ瞳を閉じると波の音と風の音が耳をかすめ、太陽の光が眩しくて少しだけ瞳を閉じると波の音と風の音が耳をかすめております。 

ゆらゆらと揺られるまま、流されるままただ身を任せ、本当に殺してくれてもよかったのに…と思うのでした。

◇ ◇

あれからいつの間か眠っていた私が目覚めると私室の寝台の上に寝かされておりました。 

 

「おい、飯にしようぜ。」 

パチンと指をセーレガ鳴らすとテーブルの上に大きなエビと魚を焼いたものが出てきました。 

「悪くない味だな。…おいジュリア、お前俺に殺されかけたんだぜ。なんか言うことないのかよ?」 

「殺してくださってよかったのですよ。」 

「へぇ、お前本当に死にたいのか?」 

「死んでも良いと思っていますけれども。」 

「なんでだよお前…苦しみてーのか?助けてくれって少しは足掻けよ。俺は悪魔なんだぜ。他人の不幸を見るのが楽しいんだよ。…ちっ」 

「セーレはどうしたいのですか?私が苦しめばセーレは楽しいですか?」 

「…お前が苦しめば俺が楽しいかだと?」 

「…ここまでよくして頂いて何もセーレにお返しできません。私を初めて会ったあの城に連れて行ってくださいませんか?そうしたら少しはセーレに恩返しができるかもしれません。」 

「あそこから逃げたかったんじゃねえのかよ」 

「否定はしません。でもずっとそういう気持ちでいたわけではなかった。以前は辛くても幸せだったのですよ。」 

「意味が分からねえ。お前を攫ってきてから礼を言われたのはなんだったんだ?」 

「それは…生きながらえることが出来たことへの感謝の言葉と受け取ってください。私はセーレが喜んでくださるのならそれでもう十分なのです。恩返しということでいかがでしょう。私にはもう何もないのですから。…ね、いい考えではないですか?」 

「なにが、ね?だ。…ああ、俺はどうしちまったんだ…お前はそれで俺が喜ぶと思ってるんだな?」 

「ええ、他の者が苦しむのが見たいのであればうってつけです。私はもうどうなってもいいのですから。」 

「お前…折角逃げてきたってえのに自らそこに俺のために戻るっていうのかよ…訳が分からねえ…お前いったい何者なんだよ。自分の言ってる意味わかってんのか?」  
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