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ゆっくりと寝て美味しい食事を静かに誰かと頂けるだなんて、一生分の幸せを使い果たしていているのでしょうか。本当にもういつ死んでもかまわないと思ってしまいます。
「セーレ、昨晩は私をここまで運んでくださったのですよね。お手間をおかけして申し訳ございませんでした。ありがとうございました。」
「謝るか礼を言うかどっちかにしろよ。…おそらくお前は人間界の高貴な部類に入るんだろ?こんな質素な朝食が食べたかったのかよ。もっと朝から肉とかなんかしゃれてるもん食いたいのかと思ったぜ。」
「セーレはどのような朝食を普段召し上がっていたのですか?」
「俺?そういやあまり朝食なんてもん食ったことなかったな。食いたいときに食ってたしな。しかし海しかねえじゃねえか、ここ。」
「そうなのですか?」
「そうか、お前はまだ見てなかったな。仕方ねえな。行くぞ。」
ぶわっと体が一瞬で浮き上がったと同時に開け放たれた窓からものすごい勢いで上空に体がもっていかれます。
「ほら、見てみろよ。」
セーレの指さす方向には限りなく広がる海原の中にポツンと浮かぶ孤島が佇んでおりました。
「そういやお前まだ飯食ってる途中だったな。まだ食うだろ。突っ立ってねえでお前も座ってみろよ。」
上空に浮いてしまっている私はセーレに言われた通りに座ると目の前に再び朝食が現れました。
「お前食うの遅せーんだな。さっきの食べ残しそのまま移動させたから食えよ。早くしねえとあいつらに食われちまうぜ。」
「え?あいつら…?あっ!!」
目の前のクロワッサンをどこから飛んできたのか鳥が一瞬で奪っていきました。
「カーッカーッ」
大きな鳥がそのまま飛んでいくのをただ茫然と見送ることしかできません。
「カーッカー…グギャアッツ!!」
「えっ??」
「ほら。早く食えよ。っあぁ?何顔引きつらせてんだ?」
突然飛んでいた鳥が悲鳴を上げたと思ったら、目の前には丸焼きにされた鳥が差し出されていました。丸焼きの鳥の口からクロワッサンをチョンととって私に手渡してくれたセーレは不思議そうに首をかしげております。
「そっ…の…丸焼き?…は…」
「これ?お前の食い物取り返したついでにこいつにも飯になってもらっただけだ。昨日力使ったせいで腹が減ってんだよ。悪魔から飯を掻っ攫おうなんて馬鹿な鳥だよな。なんだどうした。」
「…いえ、美味しいですか?」
「ああ、何だ食いたいのか?」
「いえ、そういうわけでは。…しかし海原と無人島を眺めながら上空での朝食を頂けるだなんて。もしかして私はもう死んでしまって天国についてしまったのでしょうか。」
「それはねえよな。俺は悪魔だぜ。俺と一緒にいるお前だけならともかく、今俺と一緒にいるお前が天国にいるだなんてあり得ねえだろ。」
「それは…私には分かりかねますが、セーレがおっしゃるのならそうなのでしょうね。…まあ別に私はここが地獄でも構わなかったのですが…」
そういった私に肩眉をわずかに上げたセーレは、「やっぱり食えよ」と丸焼きの鳥を突然差し出してきました。
断ることが出来なくてナイフもフォークも使わずにそのままかぶりつくと、肉汁が口の中にジュワッと広がってきました。
「なんだもう食わねえのか?ならおれが食うからな。」
「いえ、もう少し頂きます。」
「お?その意気だ。ほら。」
誰にも咎められることもなく飽きられることもない生活がこのように素晴らしいものだということを今まで知らなかったのがとてももったいなく感じたのでした。
「セーレ、昨晩は私をここまで運んでくださったのですよね。お手間をおかけして申し訳ございませんでした。ありがとうございました。」
「謝るか礼を言うかどっちかにしろよ。…おそらくお前は人間界の高貴な部類に入るんだろ?こんな質素な朝食が食べたかったのかよ。もっと朝から肉とかなんかしゃれてるもん食いたいのかと思ったぜ。」
「セーレはどのような朝食を普段召し上がっていたのですか?」
「俺?そういやあまり朝食なんてもん食ったことなかったな。食いたいときに食ってたしな。しかし海しかねえじゃねえか、ここ。」
「そうなのですか?」
「そうか、お前はまだ見てなかったな。仕方ねえな。行くぞ。」
ぶわっと体が一瞬で浮き上がったと同時に開け放たれた窓からものすごい勢いで上空に体がもっていかれます。
「ほら、見てみろよ。」
セーレの指さす方向には限りなく広がる海原の中にポツンと浮かぶ孤島が佇んでおりました。
「そういやお前まだ飯食ってる途中だったな。まだ食うだろ。突っ立ってねえでお前も座ってみろよ。」
上空に浮いてしまっている私はセーレに言われた通りに座ると目の前に再び朝食が現れました。
「お前食うの遅せーんだな。さっきの食べ残しそのまま移動させたから食えよ。早くしねえとあいつらに食われちまうぜ。」
「え?あいつら…?あっ!!」
目の前のクロワッサンをどこから飛んできたのか鳥が一瞬で奪っていきました。
「カーッカーッ」
大きな鳥がそのまま飛んでいくのをただ茫然と見送ることしかできません。
「カーッカー…グギャアッツ!!」
「えっ??」
「ほら。早く食えよ。っあぁ?何顔引きつらせてんだ?」
突然飛んでいた鳥が悲鳴を上げたと思ったら、目の前には丸焼きにされた鳥が差し出されていました。丸焼きの鳥の口からクロワッサンをチョンととって私に手渡してくれたセーレは不思議そうに首をかしげております。
「そっ…の…丸焼き?…は…」
「これ?お前の食い物取り返したついでにこいつにも飯になってもらっただけだ。昨日力使ったせいで腹が減ってんだよ。悪魔から飯を掻っ攫おうなんて馬鹿な鳥だよな。なんだどうした。」
「…いえ、美味しいですか?」
「ああ、何だ食いたいのか?」
「いえ、そういうわけでは。…しかし海原と無人島を眺めながら上空での朝食を頂けるだなんて。もしかして私はもう死んでしまって天国についてしまったのでしょうか。」
「それはねえよな。俺は悪魔だぜ。俺と一緒にいるお前だけならともかく、今俺と一緒にいるお前が天国にいるだなんてあり得ねえだろ。」
「それは…私には分かりかねますが、セーレがおっしゃるのならそうなのでしょうね。…まあ別に私はここが地獄でも構わなかったのですが…」
そういった私に肩眉をわずかに上げたセーレは、「やっぱり食えよ」と丸焼きの鳥を突然差し出してきました。
断ることが出来なくてナイフもフォークも使わずにそのままかぶりつくと、肉汁が口の中にジュワッと広がってきました。
「なんだもう食わねえのか?ならおれが食うからな。」
「いえ、もう少し頂きます。」
「お?その意気だ。ほら。」
誰にも咎められることもなく飽きられることもない生活がこのように素晴らしいものだということを今まで知らなかったのがとてももったいなく感じたのでした。
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