出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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二階建ての小ぶりなそのお屋敷の扉が勝手に開いて、まるで私たちを中にいざなっているかのようです。 

「そこにずっと突っ立ってるのか?お前がそこに突っ立って寝るってんなら止めやしないが。…ついでにお前の部屋は二階の階段上がった真正面に作っておいた…」 

「え?わたくしの部屋があるのですか?」 

「二度も言わせるなよ。お前みたいにボロボロの女、そのまま野垂れ死にしようが俺の知ったこっちゃねえが、手違いで部屋を作っちまったんだ、仕方ねえだろ。あと、お前、名前なんて言うんだ?」 

「申し遅れました。ジュリアと申します。」 

「ジュリアか。俺はセーレだ。ほらさっさと行くぞ。」 

あっという間に屋敷に入っていかれたセーレ様に続いて屋敷に足を踏み入れます。 

屋敷の中は空洞でざらざらとした灰色の壁に、ギラギラした光沢のあるステンドグラス、天井からはカラスの羽のようなものが至る所で降っておりました。 

「…俺は魔界しか知らないからな。ここの人間界の屋敷ってどんな感じなんだ?」 

「こちらの人間界の屋敷…ですか?そうですね…私も実家の屋敷と王宮を行き来するくらいで、たまにお茶会に御呼ばれしてその方々のお屋敷に伺うだけのつまらない人間でしたので、あまり参考にならないかもしれませんが。」 

「良いからいってみろよ。」 

「わたくしの実家も王宮も外壁も内装も真っ白で、絨毯と磨き上げられた大理石の床、高名な画家の絵画と高価な置物が飾られて…それから…ごほごほっ!はぁはぁっ」 

「これを飲め。ただの水だ。お前どっか悪いのかよ?」 

「はぁはぁはぁっ…ありがとうございました。セーレ様。思い出しただけで息が苦しくなってしまって…」 

「…質問を変えよう。お前はどんな屋敷に住んでみたかったんだ?」 

「…どのような屋敷に…?そうですね…こじんまりとした場所でで明るくて暖かい屋敷…。漠然としすぎで申し訳ないのですかが・」 

「なぜそこで謝るんだよ」 

ぶつぶつおっしゃっておられたセーレ様が指を軽く私の額にチョンとくっつけてきました。そうすると次第に屋敷の内装が変化してきます。 

淡いエメラルドグリーンの壁紙に、ところどころに添えられたガラスの器には砂と貝殻が入っております。 

ギラギラと光沢を放っていたステンドグラスは取り払われ、大きな窓に取り付けられた小花柄の淡い黄色のカーテンが風に揺られております。 

ポンポンポンッと、木目調の小さなダイニングテーブルに椅子が二脚、小さな小花模のティーポットに食器類、小さなキッチンは薄いモスグリーンカラーで統一されております。 

小さな暖炉とその近くにはソファーと本棚が現れました 

床には踏み心地の良い柔らかなカーペットが敷かれております。 
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