出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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「側室をこんなに早く持たれるなど、この出来損ないの馬鹿娘め!!陛下に愛想をつかされるのがこんなに早いとはな!!」 

婚姻式以来ぶりに、両親が私に面会を希望してきました。 

久々に会う両親が面会室に入って来てすぐに使用人らを下がらせた途端に罵声が飛び交います。 

やはりここにもわたくしを心配してくれる者など存在しないのだとつきつけられただけでございました。 

とくにわたくしから言いたいこともありませんでしたので、一通り両親の汚い罵声が終わるのをじっと待っておりました。 

「もうこんな時間…」 

このような時でも時間を気にしてしまうわたくしはどこかおかしくなってしまったのでしょうか。いえ、もしかしたら、最初からわたくしはおかしかったのかもしれません。 

両親の去っていった扉に近づきたくないと思いますのに、その扉を通らなければこの部屋から出らでないと、重い体にムチ打つようにゆったりと歩みを進めて行きます。 

 

両親との面会のために少し席を離れただけですのに、部屋を出て行ったときに半分は空いていた執務机がほぼ書類で埋まっております。 

「王妃陛下…」 

「ええ、分かっているわ。蜜月ですものね。良いのよ。それよりお兄様、ここでは名前で呼んでいただいてもよろしいでしょうか。」 

「それは…ああ、わかったよ。ジュリア。」 

「お兄様、ありがとう。私の側近に名乗りを上げて下さって。侯爵家の仕事も忙しいでしょうに。他の者たちは 不承不承といっった雰囲気をもう隠しもしないのよ。おかしいでしょう?出来損ないと分かっているのだったら最初から私なぞを選ばなければよかったのに…」 

「ジュリア…」 

「ごめんなさい、お兄様。お兄様だけなのこのような愚痴を零せるのは。さあ、この書類の山を片付けて行きましょうか。」 

「ああ、そうだな。しかしジュリア。何度も言うがお前は出来損ないではない。努力を重ね続けてきたお前の功績を私はよくわかっている。お前は立派な王妃だよ。」 

一度席を離れた側近たちは恐らく戻ってきませんので、お兄様と二人で書類の山を地道に片付ける作業をひたすらに繰り返します。 

日に日に私のところにまわされるエラルドの書類が増えて参りましたので、寝台に横になるのは日に三時間をきってしまいました。 

ただひたすらに国のために国民のためにとそれだけを想い、為すべきことを為すだけの日々を過ごしておりました。 

それからもうどのくらいたったでしょうか。 

「ジュリア」 

懐かしい声がわたくしをを呼ぶのを耳にしました。
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