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「少し時間が空いたわね。久々にエラルドの顔でも見に行こうかしら。」 

「ええ、ええ。陛下もお喜びになられることでしょう。」 

エラルドの執務室と私の執務室は同じ階にありますが少し離れたところにありましたので、廊下に出て私の側近とともにエラルドの執務室に向かっておりました。 

「王妃陛下。いかがなされましたか?」 

「あら、宰相?このようなところで、エラルドのところにいたのね?」 

「ええ、しかし今陛下は、いえ、王妃陛下もご覧になられたほうがここは陛下の憂いもいっぺんで片が付くかもしれませんな。では、ごきげんよう。」 

「?ええ。一体何なのかしら?」 

エラルドの執務室に到着した私は扉の前に到着いたしました。 

「王妃陛下。しかし今は…」 

「取り込み中だったかしら?」 

「いえ、それは…」 

「大丈夫なら扉を開けて頂けるかしら?」 

扉の前の近衛兵が顔色悪く扉を開けてくれました。 

 

そこには宰相の娘とエラルドがなぜか並んで座ってお茶をしておりました。 

「失礼いたします。」 

「ジュリア、びっくりしたな。どうしたんだ突然。」 

「少し時間が出来ましたので折角だから少し顔だけでも拝見させて頂こうかと思ったのですが…お忙しかったですか?」 

「いや、そんなことはない。ああ、彼女は宰相の娘、ロレッタだ。」 

「王妃陛下。お久しぶりでございます。」 

「ええ、お久しぶり、ロレッタ嬢。」 

「先程まで宰相と三人でお茶をしていたんだが、彼が席を立ってしまったので二人でお茶をしていたんだ。君も一緒にどうだ?」 

「ええ、では失礼いたします。」 

なぜでしょう。陛下の隣にロレッタ嬢も陛下も動く気配がございません。 

私はどちらに座ればよいのか戸惑いを覚えてしまいました。 

「あ、申し訳ございません王妃陛下。私がエラルド様の隣に座っていたからっ。」 

「ああ、すまない気が利かなくてジュリア。さあ、こちらにおいで。」 

ロレッタ嬢が立ち上がり私とすれ違う際に、いつも深夜に戻ってくるエラルドから香る同じ匂いがふわっと漂って参りました。 

この部屋に入ったときの二人の様子と、ロレッタ嬢とエラルドが纏う同じ石鹸の香りで嫌でも二人の関係が理解できました。 

まるで足元からガラガラと崩れ落ちて行くような…そんな絶望感に包まれたのでした。 

「ジュリア…顔色が悪いぞ。おいジュリアっ!」 

ふわりとエラルドに抱え上げられたのを最後に意識を手放してしまいました。 
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