出来損ないの王妃と成り損ないの悪魔

梅雨の人

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それからまた一年たち、国の状態も落ち着き隣国との関係も良好になり、王妃としての仕事もようやく少しだけ慣れてきたころでした。 

「やはり出来損ない王妃だったな。」「ああ、そのとおりだな。これ以上の国の発展もあの出来損ない王妃には望めそうにないな。」「しっ!陛下たちが来るぞ。」 

 

「ジュリア、気にする必要はない。皆を止めきれなかった私の力不側だな。すまない。皆が君の功績を理解せずにまた出来損ないなどと王妃である君を蔑むなどあってはならないのに。」 

「エラルド…あなたが謝らないでください。すべては私の力不足が招いたことですわ。気にしておりませんので。」 

「しかし…」 

 

以前エラルドが国王の威厳を見せ王妃である私を蔑む発言をしないようげ厳令を下したのにもかかわらず、不思議なことに再び王宮内で私を蔑む発言は収まるところを知りませんでした。 

気にしないとエラルドに言ったものの、やはり本心ではこれだけ頑張っても皆にまだまだ認めてもらえていないのだと落ち込んだものです。 

「ジュリア、少しいいか?」 

「ええ、いかがしたのですかエラルド?」 

「ああ、今日の夕餉なのだが久々にともにと約束をしていたが急に宰相が話があるということで、彼とともに夕餉をとることになってしまった。すまないがまた次の機会にしてもいいだろうか。」 

「もちろんですわ。むしろわざわざ今こうして会いに来てくださっただけでもありがたいですのに。」 

「ありがとう、ジュリア。ではまた。」 

「ええ、エラルド。」 

 

その日からでしょうか。エラルドの側で宰相の姿をお見掛けするようになりました。 

宰相であるノンベルト侯爵は前王の時より引き続き宰相をされており、若輩者の私やエラルドにとってとても頼れる存在でした。 

「エラルド、最近宰相とよく一緒にお見掛けするのだけれども何か変わったことでもあったのかしら。」 

「そうか?いや、特に変わったことはないが。そうだな。父が亡くなる前の話を宰相から聞いたり、時折宰相の意見を聞いたりはしているが。」 

「そうでしたのね。」 

「ああ、父亡き今、彼が私の父代わりのような存在なのかもしれないな。それと今夜、屋敷に招かれたから行ってくるよ。」 

「そうですか、楽しんでいらしてくださいね。」 

「たまには君も息抜きをすればいいさ。」 

その時になぜエラルドだけが宰相ノンベルト侯爵の屋敷に招かれたのかもっと深く考えるべきだったと、後々深く後悔することになるなど思ってもみませんでした。 
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