8 / 11
7
しおりを挟む
前王妃様の執務の一部を以前からお手伝いしていた苦労が報われたと申しますか、王妃としての執務は順調で、厳しく身につけさせられた作法にも問題はなく、本音を隠した社交もつつがなくこなす毎日を送っておりました。
時間はいくらあっても足りずそれはエラルドも同じことで、お互いに顔を合わせるのは一日の終わった寝室で閨を共にするときと朝起きた瞬間だけでございました。
閨でエラルドと話すことと言えば、その日お互いに行った業務の情報交換と、これからのこの国を立て直すためにすべきことでございました。
若くして国王と王妃と成った私たちに、公私を分けるなど器用なことが出来るはずもありませんでした。
いつしか私とエラルドの話すことといえばお互いの執務のことばかりで、夫婦という純粋にお互いが癒しを感じる時間というものが無くなっていたのだと思います。
未熟者ではありましたが国のために、エラルドのためにとひたすらに奔走しプレッシャーに耐え続けあっという間に、一年が経過いたしました。
しかしそのころになると、若い王妃の私の頑張りと功績をなかなか認めようとしない者たちが現れて参りました。
「出来損ない王妃様のご登場だ。」「ああ、見目が良いだけのあの出来損ない王妃だったか。」「ごらんになって、出来損ない王妃様がいらしたわ。」「しっ、そんな大きな声で言ってしまっては聞こえてしまうわよ、出来損ない王妃様に」
今考えたらそれが誰の仕業だったのかなど簡単にわかることでございましたが、その当時のエラルドとわたくしにとって知る由ございませんでした。
自慢するわけではありませんが、わたくしが長年このロプノール王国を立て直すために練りに練ってきた計画は幸運にもうまく行き順調に国の経済も潤い国民の皆にも安全で落ち着いた生活が戻って参りました。
ですので、出来損ないと陰で言われているのを聞いて腹立たしいのと同時に、やはり私は未熟者だと思い知らされたものです。
「ジュリア、君のおかげだよ。本当にありがとう。」
「何をおっしゃるのエラルド。あなたがいればこそじゃない。あなたがいなければ私の計画なんて実現なしえなかったわ。」
「しかし、王宮内での君の評価についてだが納得いかないな。しかも君を出来損ないだなどと…」
「大丈夫よエラルド。言いたい者たちには言わせておけばいいわ。」
「それでは駄目だよジュリア。君は王妃である前に私の大切な妻だからね。早々に黙らせるよう取り図ろう。」
「エラルド…」
それから本当に王宮内で私を出来損ない王妃と呼ぶ声を聴くことはしばらくの間ございませんでした。
そう、それはほんのつかの間のことでございました。
時間はいくらあっても足りずそれはエラルドも同じことで、お互いに顔を合わせるのは一日の終わった寝室で閨を共にするときと朝起きた瞬間だけでございました。
閨でエラルドと話すことと言えば、その日お互いに行った業務の情報交換と、これからのこの国を立て直すためにすべきことでございました。
若くして国王と王妃と成った私たちに、公私を分けるなど器用なことが出来るはずもありませんでした。
いつしか私とエラルドの話すことといえばお互いの執務のことばかりで、夫婦という純粋にお互いが癒しを感じる時間というものが無くなっていたのだと思います。
未熟者ではありましたが国のために、エラルドのためにとひたすらに奔走しプレッシャーに耐え続けあっという間に、一年が経過いたしました。
しかしそのころになると、若い王妃の私の頑張りと功績をなかなか認めようとしない者たちが現れて参りました。
「出来損ない王妃様のご登場だ。」「ああ、見目が良いだけのあの出来損ない王妃だったか。」「ごらんになって、出来損ない王妃様がいらしたわ。」「しっ、そんな大きな声で言ってしまっては聞こえてしまうわよ、出来損ない王妃様に」
今考えたらそれが誰の仕業だったのかなど簡単にわかることでございましたが、その当時のエラルドとわたくしにとって知る由ございませんでした。
自慢するわけではありませんが、わたくしが長年このロプノール王国を立て直すために練りに練ってきた計画は幸運にもうまく行き順調に国の経済も潤い国民の皆にも安全で落ち着いた生活が戻って参りました。
ですので、出来損ないと陰で言われているのを聞いて腹立たしいのと同時に、やはり私は未熟者だと思い知らされたものです。
「ジュリア、君のおかげだよ。本当にありがとう。」
「何をおっしゃるのエラルド。あなたがいればこそじゃない。あなたがいなければ私の計画なんて実現なしえなかったわ。」
「しかし、王宮内での君の評価についてだが納得いかないな。しかも君を出来損ないだなどと…」
「大丈夫よエラルド。言いたい者たちには言わせておけばいいわ。」
「それでは駄目だよジュリア。君は王妃である前に私の大切な妻だからね。早々に黙らせるよう取り図ろう。」
「エラルド…」
それから本当に王宮内で私を出来損ない王妃と呼ぶ声を聴くことはしばらくの間ございませんでした。
そう、それはほんのつかの間のことでございました。
25
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
私はあなたの何番目ですか?
ましろ
恋愛
医療魔法士ルシアの恋人セシリオは王女の専属護衛騎士。王女はひと月後には隣国の王子のもとへ嫁ぐ。無事輿入れが終わったら結婚しようと約束していた。
しかし、隣国の情勢不安が騒がれだした。不安に怯える王女は、セシリオに1年だけ一緒に来てほしいと懇願した。
基本ご都合主義。R15は保険です。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
【完結】妹にあげるわ。
たろ
恋愛
なんでも欲しがる妹。だったら要らないからあげるわ。
婚約者だったケリーと妹のキャサリンが我が家で逢瀬をしていた時、妹の紅茶の味がおかしかった。
それだけでわたしが殺そうとしたと両親に責められた。
いやいやわたし出かけていたから!知らないわ。
それに婚約は半年前に解消しているのよ!書類すら見ていないのね?お父様。
なんでも欲しがる妹。可愛い妹が大切な両親。
浮気症のケリーなんて喜んで妹にあげるわ。ついでにわたしのドレスも宝石もどうぞ。
家を追い出されて意気揚々と一人で暮らし始めたアリスティア。
もともと家を出る計画を立てていたので、ここから幸せに………と思ったらまた妹がやってきて、今度はアリスティアの今の生活を欲しがった。
だったら、この生活もあげるわ。
だけどね、キャサリン……わたしの本当に愛する人たちだけはあげられないの。
キャサリン達に痛い目に遭わせて……アリスティアは幸せになります!
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
〖完結〗転生前の記憶が戻ったので、最低な旦那様とはお別れします。
藍川みいな
恋愛
夫スチュワートの浮気現場を見た瞬間、前世の記憶が戻ったミリアーナ。スチュワートは前世でもミリアーナを裏切り続けた相手だった。
離縁を告げて実家に帰り、父スベン男爵に愛人の事を話すと、スベン男爵は激怒し…
「あのクソ野郎……絶対に許さない! その令嬢も同罪だ! 大切な娘を侮辱した事を後悔させてやる!」
そしてスチュワートと愛人は全てを失う事に…
設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。
本編5話で完結になります。
もうひとつの最終回2話←最初はこちらが本当の最終回でした。アッサリ編と前世編がありますので、どちらか好きな方をお読み頂けたらと思います。
愛される王女の物語
ててて
恋愛
第2王女は生まれた時に母をなくし、荒れ果てた後宮で第1王女とその義母に虐められていた。
周りは彼女を助けない。国民はもちろん、国王や王子さえ…
それは彼女の生存を知り得なかったから。
徹底的に義母が隠していたのだ。
国王たちは後宮に近づくこともしなかった。
いや、近づきたくなかった。
義母とその娘に会いたくなくて、出来るだけ関わらないようにしていた。
では、そんな中で育った誰も知らない第2王女を偶然に出会い見つけたら…?
第1章→家族愛
第2章→学園
王太子の望む妃
りりん
恋愛
ルーファット王国の王太子リンゼイには、侯爵家の次女であるマリアンヌという婚約者がいる。勢力を考慮した政略であり、可愛らしく華やかでありながらも儚げなマリアンヌとの婚約には不満はなかったが、婚儀が迫る中、中々進まない妃教育やマリアンヌの家庭環境などが気になり始めたリンゼイは·····。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる