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いつの頃からか出来損ないの王妃だと陰で言われて参りました。 

それはおそらく度重なった災害で疲弊していたこの国を立て直すために奔走し、慣れない王妃の仕事に追われ、ようやく落ち着いたころからだったでしょうか。 

夫である国王エラルドは早逝してしまった前国王に変わり若干20歳で国王となり、彼を心から愛していたわたくしはエラルドが立派な王となるためにできる限りのことをいたしておりました。 

王妃の仕事の合間に時間を縫っては国民に寄り添い復興を手助けし、国の経済を活性化させ人々が豊かな生活が折れれるようになるための策を練り続ける飾り気の全くないわたくしを理解する貴族は多くはありませんでした。 

家族は私の行っていることに意味をなさないと貴族である我々に何の得になるのだ、何を一体私はしているのかと顔を合わせれば嫌味しか言ってはきませんでした。だから出来損ないの王妃だと言われるのだと最後の捨て台詞を残して去っていくのでした。 

王妃であるわたくしには表面上敬意を払っておる者たちも、陰ではわたくしのことを出来損ない王妃と蔑んで呼んででいるのをよく耳にしたものです。 

◇◇ 

望んでもいなかった王太子の婚約者に10歳で選ばれてから、公爵家の長女としての教養、母のすべき公爵夫人の執務に加え、王太子の婚約者としての勉強が始まりいつもくたくたで一人涙を流しておりました。
幼い私はそれが私の使命なのだろうとわけもわからず耐えて全力を尽くしておりましたが。

いつしかそれに、学業と父の執務の手伝いも含まれて睡眠時間があっという間にみじかくなって涙を流す時間も惜しくなってしまいました。 

それでも歯を食いしばって頑張っていたのは、婚約者である王太子エラルドと将来並んでこの国を導いていくのだと約束したからでございました。そして 兄と徐ラルド以外に私に優しく接してくれるエラルドに恋をしないなど到底無理なことだったのです。



「ジュリア、私の隣にずっといてくれるかい?ジュリアとならどんな辛いことでも乗り越えて行けると思うんだ。一緒にこの国を導いて行こう。これからもどうか私に一生ついて来てほしい。」 

婚約者となって5年後、15歳の春のことでございました。 

久々に息抜きでもしようとエラルドに連れられて大きな木の根元につくと恭しく跪いたエラルドが私の手を取って口づけを贈ってくれたのでした。 

風が吹いて紫色の花々が私たちを祝福するかのようにふわふわと舞っていて、それはおとぎ話に出て来るかのような美しい光景でした。 
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