もうあなたを離さない

梅雨の人

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巻き戻り前

王家の秘宝

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この騒ぎにより、レオとその父リングシャー伯爵それからアイシャの父のロングシャー伯爵は後日国王から呼び出され王宮へ向かった。

皆一様に憔悴しきった顔を晒し、アイシャの父ロングシャー伯爵に至っては王の前であるというのに今にもレオに飛び掛からんばかりの殺気を放っていた。

そこへ王に呼ばれ出てきた件の神官により聖女のペンダントが再びレオナルドの元にかざされた。
「リングシャーの次男レオナルドよ、そなたにかけられていた魅了は今その聖女の残してくれたペンダントにより取り払うことが出来たはずだ。どうだ?」

「陛下、魅了…とおっしゃいましたか?」

「ああ、魅了だ。あのリズリーとかいう女は魅了の魔力をもつ一族の末裔だった。もう少し早く対応できていれば、そなたの妻を失わずに済んだであろう。これから話すことは、内密に口外してはならぬ。良いな?」

そう言って王が語る内容は信じられないものだった。

「かつてわが国には魅了を操る一族が存在していた。その魅了による被害はいつしか拡大し、遂には王族一族にまで及んだ結果、一族郎党は処分されたはずだった。そしてこの件について、国の存亡を脅かす事例になると恐れた王によって、箝口令が敷かれた。しかし、今回この神官からの報告でまだその魅了一家が生き残っていたと気が付いた我々は、今度こそ一人残らずとらえていたという訳だ。リズリーを最後まで泳がせたのは、他のものに我々が動き出したのを気が付かれないためだった。」

「そんなっ…じゃあ、アイシャが殺されたのは…。」

「ああ…。もう少し早く我々が動けていればそなたは妻を失うことはなかったのかもしれん。一度魅了の力を聖女のペンダントで取り払ったお主に、リズリーは牢から出るため再びなけなしの力で魅了に駆けたようだが。しかし魔力がわずかしか残っていなかった女のお主にかけたその効果は薄かったようだな。取り調べで分かったことだが、お主は不運なことにその女から一目惚れされたがため、魅了にかけられてしまっていたようだ。全く恐ろしく不快な力だ。あの女は魔術研究室へ送られた後処分される。もう外の世界を見ることはないだろう。そして既にあの女に関係するものは既に処刑してある。」

その後、王の間に残るように言われたレオナルドの前に王自らが不思議な色のした水晶を差し出してきた。

「今回の一件はあの一族を取り逃がしていることに今まで気が付かなかった我々王家の責任だ。すまなかった…。これは王家に伝わる秘宝でな。言い伝えでは過去に戻ることが出来るらしい。もしお主が望むなら使うことを許可しよう。」

「過去に…。よろしいのでしょうか…。」
「ああ、許可する。ただし過去に戻ったらすぐに私に魅了一族のことを知らせてくれ。そしてお主の妻を今度こそ幸せにするのだぞ。いいな?」

そして、決してその表情を変えることのない王がわずかに笑顔を見せた後呪文を唱えたかと思うと、レオナルドは意識を失い世界が一転していった。
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