もうあなたを離さない

梅雨の人

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巻き戻り前

目覚め

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伯爵が協会を訪ねた次の日、急に先ぶれもなくレオナルドをあの神官が訪ねてきたが、父である伯爵は快くその神官を屋敷に招き入れた。

そしてその神官が、レオナルドの為にともって来てくれたのは、かつて聖女が残した聖なるベンダントであった。

詳細を伝えることは禁じられているが、もしかしたらそのペンダントがレオナルドを救うことが出来るかもしれないとその神官は伯爵に告げた。

そしてまずは現状を確認するためにも是非レオナルドにあわせてほしいと頼まれた伯爵は、藁にも縋る気持ちでその神官をレオナルドのいる部屋へ通した。

横たわるレオナルドを目の前にした神官はレオナルドの様子を確認した後、聖女の残したとされるペンダントをおもむろに箱から取り出した。

ペンダントをレオナルドの体に向けて掲げ祈りを捧げる神官を、伯爵はただ見守るしかなかった。

部屋の中が神官によって紡がれる祈りの声で溢れ、ペンダントが一瞬の強い光を放ったそのすぐ後、レオナルドの意識がゆっくりと覚醒していった。

目覚めたレオナルドはしばらく朦朧としていた。

徐々に正気に戻っていったレオナルドは、リズリーと出会ってからの己の行動を思い出し嫌悪し、不快感で何度も嘔吐した。。

なぜ、愛する妻がいながらあのリズリーという女とそういう関係になってしまったのか…。

次の日、どうにか動けるようになったレオナルドはどうしてもアイシャのところへ行かなければと切羽詰まったように駆けだそうとした。
レオナルドの父と兄がどうにかそれを抑えようとしたが、その制止を振り切ったレオナルドは屋敷を飛び出しアイシャの元へ向かった。

レオナルドの兄のジャックはすぐに弟の後を追いかけたが、追いついた時には時すでに遅く、アイシャの兄であるハンクの絶対零度ともいえる視線をレオナルドが受けているときだった。

「ハンク、心から謝る。申し訳なかった。どうにかしていたんだ。お願いだ、アイシャにあわせてくれ。」
「謝る?申し訳なかった?どうにかしてた?それでお前がアイシャにしたことが許されると思っているのか…?よくものこのこと、ここにこれたものだな。恥知らずめ。」

「俺が愛しているのはアイシャだけで物心つく前から妻にすると決めていたんだ。それなのに…。頭の中を強い霧のようなもので覆われてたきがする。悪夢をずっと見ていたとしかいいようがないんだ。信じてもらえないだろうがお願いだ、ハンク。アイシャに会わせてくれ!」

「何をわけのわからないことをほざいてるんだお前は。信じられるかそんな話。アイシャには会わせない。帰ってくれ。」
「待ってくれ!お願いだ!アイシャに会わせてくれっ!」

アイシャに会うためにハンクに必死に取りすがる弟を目の当たりにしたジャックはただその場に立ち尽くした。

悲観に暮れる弟をそのままにするわけにもいかず、抱き起して立ち去ろうとしたその時扉が開いてそこからレオナルドが焦がれていた大切な存在が現れた。
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