10 / 23
巻き戻り前
違和感1:アイシャの兄ハンク視点
しおりを挟む
妹を攫うように連れて帰ったその日、妹の姿を目の当たりにして愕然とした。
薄暗い早朝に、使いの者が妹の屋敷からきていると言って執事から起こされた。
父は既に起きてきていて、その伝言を読み終わりその表情は怒気を含んだものになっていた。父自ら妹を迎えに行くというのを抑えてすぐに妹を連れて帰ることを決心した俺はすぐに準備をして向かった。
向かった先にはかつての溌溂とした妹の姿はなく、肉が削げ落ち顔色は悪く、今にも倒れてしまいそうな姿があった。
抱きしめた妹の体は弱々しく、冗談抜きですぐに折れてしまうのではと心配になるほどであった。
その姿に大きな衝撃を受けつつも、どうにか早く大切な妹をこの場から連れ去らねばと冷静を装った。
こんなことがいつか起きるのではないかと心配していたがその心配は的中してしまった。
俺の知っている限り、奴は妹のことを心から愛し大切にしていたはずだ。
あいつは物心ついた時から妹に惚れてたんだ。
あれが演技だったなんてありえない。
あの愛人とやらに出会ってから心変わりしたといっても変な話だ…。
あいつは、心変わりしたからと言ってこんな非道なことをする奴だったか?
小さいときから奴のことを知っている俺としてはあの男の変わりようが信じられなかった。
愛人の話を聞いてすぐにあいつに会いに行ったが、何も問題はないと言って奴は俺の話を聞こうともしなかった。
妹は憔悴しきっていたので、何度も実家に連れて帰ろうと説得を試みたが、いつか奴が自分の元へ戻って来てくれるのではないかと首を縦に振ろうとしてくれなかった。
無理やりにでもこうなる前に妹を連れて帰っておけばよかったと深く後悔した。
こんなことになるなんて…。
母が亡くなってからは、父と妹の三人でその喪失感を互いに補うように生きてきた。
母をこよなく愛していた父は、再婚話を一切寄せ付けず、ただただ俺と妹の幸せを願ってきてくれたような人だ。
屋敷に妹を連れ帰り、軽くなってしまった妹を抱えていくと父が妹のところに駆け寄ってきた。
娘のその姿にひどく衝撃を受けたであろう父は、言葉を失い横たわった妹の傍にずっと付き添っていた。
一緒に連れ帰った侍女のメアリーにこれまでの状況を聞き出した俺と父は怒りに震え、すぐに離婚へ向けての準備と妹の説得に乗り出した。
薄暗い早朝に、使いの者が妹の屋敷からきていると言って執事から起こされた。
父は既に起きてきていて、その伝言を読み終わりその表情は怒気を含んだものになっていた。父自ら妹を迎えに行くというのを抑えてすぐに妹を連れて帰ることを決心した俺はすぐに準備をして向かった。
向かった先にはかつての溌溂とした妹の姿はなく、肉が削げ落ち顔色は悪く、今にも倒れてしまいそうな姿があった。
抱きしめた妹の体は弱々しく、冗談抜きですぐに折れてしまうのではと心配になるほどであった。
その姿に大きな衝撃を受けつつも、どうにか早く大切な妹をこの場から連れ去らねばと冷静を装った。
こんなことがいつか起きるのではないかと心配していたがその心配は的中してしまった。
俺の知っている限り、奴は妹のことを心から愛し大切にしていたはずだ。
あいつは物心ついた時から妹に惚れてたんだ。
あれが演技だったなんてありえない。
あの愛人とやらに出会ってから心変わりしたといっても変な話だ…。
あいつは、心変わりしたからと言ってこんな非道なことをする奴だったか?
小さいときから奴のことを知っている俺としてはあの男の変わりようが信じられなかった。
愛人の話を聞いてすぐにあいつに会いに行ったが、何も問題はないと言って奴は俺の話を聞こうともしなかった。
妹は憔悴しきっていたので、何度も実家に連れて帰ろうと説得を試みたが、いつか奴が自分の元へ戻って来てくれるのではないかと首を縦に振ろうとしてくれなかった。
無理やりにでもこうなる前に妹を連れて帰っておけばよかったと深く後悔した。
こんなことになるなんて…。
母が亡くなってからは、父と妹の三人でその喪失感を互いに補うように生きてきた。
母をこよなく愛していた父は、再婚話を一切寄せ付けず、ただただ俺と妹の幸せを願ってきてくれたような人だ。
屋敷に妹を連れ帰り、軽くなってしまった妹を抱えていくと父が妹のところに駆け寄ってきた。
娘のその姿にひどく衝撃を受けたであろう父は、言葉を失い横たわった妹の傍にずっと付き添っていた。
一緒に連れ帰った侍女のメアリーにこれまでの状況を聞き出した俺と父は怒りに震え、すぐに離婚へ向けての準備と妹の説得に乗り出した。
194
お気に入りに追加
1,276
あなたにおすすめの小説
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定

【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います
黒幸
恋愛
ネドヴェト侯爵家に生まれた四姉妹の末っ子アマーリエ(エミー)は元気でおしゃまな女の子。
美人で聡明な長女。
利発で活発な次女。
病弱で温和な三女。
兄妹同然に育った第二王子。
時に元気が良すぎて、怒られるアマーリエは誰からも愛されている。
誰もがそう思っていました。
サブタイトルが台詞ぽい時はアマーリエの一人称視点。
客観的なサブタイトル名の時は三人称視点やその他の視点になります。

【完結】わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。
たろ
恋愛
今まで何とかぶち壊してきた婚約話。
だけど今回は無理だった。
突然の婚約。
え?なんで?嫌だよ。
幼馴染のリヴィ・アルゼン。
ずっとずっと友達だと思ってたのに魔法が使えなくて嫌われてしまった。意地悪ばかりされて嫌われているから避けていたのに、それなのになんで婚約しなきゃいけないの?
好き過ぎてリヴィはミルヒーナに意地悪したり冷たくしたり。おかげでミルヒーナはリヴィが苦手になりとにかく逃げてしまう。
なのに気がつけば結婚させられて……
意地悪なのか優しいのかわからないリヴィ。
戸惑いながらも少しずつリヴィと幸せな結婚生活を送ろうと頑張り始めたミルヒーナ。
なのにマルシアというリヴィの元恋人が現れて……
「離縁したい」と思い始めリヴィから逃げようと頑張るミルヒーナ。
リヴィは、ミルヒーナを逃したくないのでなんとか関係を修復しようとするのだけど……
◆ 短編予定でしたがやはり長編になってしまいそうです。
申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる